マンマ・ミーア!


喰種世界3







エト(高槻泉)視点



最近、気になる後輩がいる。


「ねぇー、アリアちゃん」

「はい何ですか泉さん」


宗教画から飛び出て来たみたいな、嘘みたいに綺麗な女の子。デビュー当時13歳という、私よりも異例の文学界の天才。

ファンタジー小説とミステリー小説。ジャンルが違う私たちだけど、多分お互い一番仲がいい。まぁアリアちゃん自身ファンタジーに出てくる妖精みたいな美少女だけど。


「アリアちゃんって、ハーフなんだよね」

「そうですよ。父はイギリス人で、母は日本人です」

白皙の肌は日本人じゃなくてお父さんから受け継いだのね。


「へぇ…じゃあペンネームの“アリア・ブランド―”って実は本名?」

今じゃファンタジー小説家といえばブランド―作品って言われるほど有名だ。


「そうともいいますね。元々父に引き取られてブランド―を名乗っていましたが、父亡き後、イタリアで暮らしていた母に育てられたので、母の姓だった“汐華”を今は名乗ってます」

「ふぅん。お父さん、好きなんだ。」

「えっ、」


何気ない一言だった。けど、

「好き、でした…いえ、好きですよ」

そんな悲しそうな顔をさせたかったわけじゃないのに。つい自分の父親のことを思い出した。私にもそんな時代あったかな、ないな。


「好き、なんだ…でもいないんでしょ?寂しくないの?」

きっと、彼女にとって“お父さん”は、私にとっての“お母さん”みたいな存在だったんだろう。その複雑そうな顔を見て、そう感じた。

だけど母のことを思い出すと、いつだって胸が痛む。今の余程酷い顔をしていたんだろう。

「アリアちゃん?」

ギュッと、抱きしめられた。温かい。
アリアちゃんの不思議な匂いに包まれる。


「…お父さんはとても悪い人でした。」

その時、ポツリと呟くように彼女は私にその黒く塗りつぶされているだろう過去を教えてくれた。


「でも、私には優しかったから、大好きなんです。それにお母さんは優しくないし、酷い人でしたけどお兄ちゃんはもっと大好きです。それにお兄ちゃんのお友達も私を妹みたいに可愛がってくれました。今はちょっと、暫く皆とは会えませんが、私、寂しくないです。最初は慣れない環境に戸惑ってましたが、出版社の方がよくしてくれますし、何より泉さんがこうして私とお話してくれます。だから貴女は今の私にとってお姉ちゃんみたいな存在なんです!」


お姉ちゃん…私を、家族だと、思ってくれている?

「……」

「図々しいこと言って御免なさい。でも泉さんが寂しいときは私を頼ってくださいね」


最初は屹度、私と違って愛されてきたんだと思った。愛されて、孤独の苦しみなんて知らないって…。

でも、彼女が過去について語る際の眼を見て解った。彼女は私と同じ苦しみを知っている。そして私がタタラさんやノロに出会って、感じた喜びに近い感情も共感してくれる、と。


君は私を姉と称した。なら君は私の妹だ。
似た者同士、血の繋がらない姉妹でもいいんじゃない?


「……はぁ、負けた。もう、アリアちゃんは、ううん、アリアは凄いなぁ。」

よくわからないのか、コテンと首を傾げるアリアが可愛くて、つい声をだして笑った。
ほんとに可愛いなぁ。


「私の事、お姉ちゃんみたいに思うなら、今度からは“泉さん”じゃなくって、“お姉ちゃん”って呼んでよ。じゃないと許さないぞ!」


フフ、そんなに可愛い顔してると食べちゃうぞ!




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