マンマ・ミーア!
喰種世界2
2
いやぁ、助かった。
思わず心の中で「助けてお父さん!」って叫んだ瞬間思い出したよ。“スタンド”という特殊能力の存在を。もしお父さんがいたら「ザ・ワールド!」って時間を止めて逃亡(あ、お父さんなら時止めている間に相手を殺しているか)出来たけど、私のスタンドだけでも十分役に立つ。
“空間移動”、所謂テレポートという逃げるために適したこれほど使える能力は他にはないだろう。
結局、あれこれ情報収集をして解った結果、ここは『東京喰種』の世界だった。あの白い人も見覚えがあるけど、私アニメの途中までしか見てないから解んないや。
兎に角この世界には【人間】と【喰種】と【半吸血鬼の私】が存在する。
うわぁ、相変わらず立場的に微妙。
まだ主人公の方みたいに後天的な喰種のほうがよかった。または半喰種。隻眼ってなんだかカッコイイし。
まぁどっちにしろ主要人物には関わりたくないよ!精神で早くも数年。相変わらず私は小説家として生計を立てている。
私的には身内の伝記とかお父さんが吸血鬼になったアイテムのルーツを調べいる途中でしった歴史を元に歴史小説みたいのを書いていただけなのに、別の世界で出版すると必ずファンタジー小説になってしまう。
何度かサイン会なるものをしたけど、ナルト世界よりも売れてないや。だって50人くらいだし、来たの。あっちよりこの世界の方が出版技術が優れている分、売れ筋もはっきりしてるよね。でも小説家一本で普通に慎ましく暮らしているので今の所困ることは無い。
だけど早く元の世界(ジョジョの世界)に帰りたい。ジョルノ兄さんに養われて、売れなくてもいいから好きな話書きたい。
だって何故かファンタジー以外書こうとしたら出版社からダメ出しされるもん。なんか「先生は是非ファンタジー小説を世に広めてください!ってかその人間離れした美貌にはファンタジーが一番似合います!」とか興奮気味に云われても意味わからない。助けてお兄ちゃーん!
まあ15歳の子ども(しかも戸籍は捏造)に無駄な干渉してこないだけいいけど。
一応お父さんが死んだので離婚した母方に引き取られたが、上手くやって行けず、13歳で家出した設定です。嘘は言ってない。トリップした当初は何故か身長縮んでたし。
そして私の先輩には高槻泉という凄い美人さんがいる。ミステリー小説家だけど、私のことを何かと気に掛けてくれる凄いいい人です。あ、違った、いい喰種です。
え、なんで喰種か解るかって?それは、まあ匂いですよ。半吸血鬼ですから五感は人より優れてるんです!えっへん。
「ねぇー、アリアちゃん」
「はい何ですか泉さん」
「アリアちゃんって、ハーフなんだよね」
「そうですよ。父は(元)イギリス人で、母は日本人です」
「へぇ…じゃあペンネームの“アリア・ブランド―”って実は本名?」
「そうともいいますね。元々父に引き取られてブランド―を名乗っていましたが、父亡き後、イタリアで暮らしていた母に(というか兄に)育てられたので、母の姓だった“汐華”を今は名乗ってます」
「ふぅん。お父さん、好きなんだ。」
「えっ、」
お父さんのことが?まぁ好きか嫌いかでいうなら
「好き、でした…いえ、好きですよ」
お父さん儚く散ったなぁと思い出していると何やら泉さんが苦しそうな顔をしています。え、どうしたんですか?!
「好き、なんだ…でもいないんでしょ?寂しくないの?」
くしゃり。そう言っている泉さんの方が顔を歪めて今にも泣きそうなので、ああ、もう、どうにでもなれと思い、ギュッと抱きしめる。
「アリアちゃん?」
突然のことに吃驚したのかさっきより随分とマシな表情に、ほっとする。
だからそのままの体勢で言いました。
「…お父さんはとても悪い人でした。」
そう、育ててもらった恩を忘れ、義父に毒を盛ったり、義兄弟の人生をめちゃめちゃにしたり、その義兄弟の血族を百年後に苦しめたり殺そうとしたりと良いところなんてあるのかと身内でも疑います。
「でも、私には優しかったから、大好きなんです。それにお母さんは優しくないし、酷い人でしたけどお兄ちゃんはもっと大好きです。それにお兄ちゃんのお友達も私を妹みたいに可愛がってくれました。今はちょっと、暫く皆とは会えませんが、私、寂しくないです。最初は慣れない環境に戸惑ってましたが、出版社の方がよくしてくれますし、何より泉さんがこうして私とお話してくれます。だから貴女は今の私にとってお姉ちゃんみたいな存在なんです!」
「……」
「図々しいこと言って御免なさい。でも泉さんが寂しいときは私を頼ってくださいね」
「……はぁ、負けた。もう、アリアちゃんは、ううん、アリアは凄いなぁ。」
はて?どこが?
首を傾げているとクスクス笑われました。う、美人の微笑みが眩しい!
「私の事、お姉ちゃんみたいに思うなら、今度からは“泉さん”じゃなくって、“お姉ちゃん”って呼んでよ。じゃないと許さないぞ!」
その時の泉さん、改めお姉ちゃんがきめたウィンクに心臓がズキュン!されました。
- 43 -prev | next
[mokuji]