マンマ・ミーア!








ルイス・ブランド―はオカマである。これは例え吸血鬼である実父であろうと、その父を神だとかいって崇拝する神父であろうと、直し様のない生まれ持った性質である。

だがそれが誰かに悪影響を及ぼすことはなし、批難されることもない。
彼(彼女)が好むピンクではなくどッピンクのレザーの服の奇抜さは実家ではそれほど浮かないし、一般的には奇声とも取れる「ヒ――ハ――!」という口癖も注意されることがない。


何しろ親が親だ。服装も、口癖も、そして・・・カリスマ性も遺伝したといっても万人が納得してしまう。


「ヴァナータは今日から女よ、生まれ変わった自分を楽しみなさい」


そういって差し伸べられた手に迷いなく手を重ねた半裸の女性。
女性は美しい銀髪に愛嬌のある顔立ちをしているが、その白く小さな額からルイスが何かを掴みとった。

ルイスの手の中で蠢くそれは『肉の目』といい、彼の父親の細胞だ。DIOは服従しそうにない相手にこうしてカリスマ性を植え付け、心酔し忠実な部下を増やしているのだ。

だがしかし、その肉の目、何故か通常の肉の目と違う。
口らしきところにはピンクの口紅がたっぷりとついており、花でいう茎の部分には赤いリボンが結ばれている。


しまったとばつが悪そうな顔をしたルイスとそれを不思議そうに見つめる女性。
次の瞬間、屋敷に奇妙な悲鳴が上がった。


URYYYYYYYYYYYY!!


ドドドドドドドッ!!

バァー―ン!!
扉が壊れるんじゃないかと思うほど強く蹴飛ばされた。室内に入るなり一瞬でルイスに両頬を左右反対に引っ張る男は大変お怒りである。

「いだだだだだ!ひゃめてよババ(やめてよパパ)」

「お・ま・え・は・・・だから私の部下をオカマにするなと再三言い聞かせただろうが!!」

罰だ、反省しろと。ミョンミョン引っ張られる。DIOの表情が怒りから楽しそうなそれに代わっているので今の自分の姿を忘れているのだろう。


偶然通りかかったホル・ホースがそれをみて悲鳴を上げるまでDIOは肉の目同様にピンクの口紅をつけ、マスカラがバッチリ睫毛に塗られた上にオカマらしいメイクが施された顔と金髪に結ばれた赤いリボンの存在を忘れているのだった。





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