マンマ・ミーア!








数十年後、成長した私は学校に通っていないはずなのに一人で店を立ち上げたことでここいらでは有名になった。理不尽な役人がきても言い返せるだけの口と知識はある。暴力に訴えられても逆に返り討ちにした。

本当は本屋がよかったけどこの町じゃ需要がないので喫茶店ということで手を打った・・・はずが


「何故貴方がここにいるのですか、ダリオ」

「ああ?!!いちゃあ悪いのかよォ!」


悪いわよ。ここは私の店よ!って言いたいのに悲しいかな。幼馴染としての情がある。この何かと不幸な少年も青年へと成長したが昔より運がないのか厄介ごとに巻き込まれ、いまじゃすっかり擦れてしまった。絆されて店に来ても追い出さなかったらいつの間にか私の店が酒屋へと変わっていただと?!!


間抜けはどっちだ!にぶちんだった私を殴りたい衝動に駆られる。
その晩ヤケ酒というものを今生で初めてやったが何てことだ。前世じゃ酒豪とまではいかなくともそれなりに強かったはずが今生ではものすご〜く弱かったらしく、翌朝、何故かダリオの隣で裸で寝ていた。


要するに、一夜の過ちである。うりいいいいいい〜・・・


それから没落したとはいえ貴族だった両親によって結婚する気皆無だった私は無理矢理ダリオと結婚する羽目になり、37歳、まさかの妊娠。

なんでこの年でって思うかもしれないけど、若いころはダリオと一夜の過ちをしてから結婚しても避けてたからね。今回のも仕事で疲れて帰ったところを襲われてだったし。

しかし四捨五入すれば40だ。20世紀なら兎も角この時代この年で妊娠は中々厳しいものだ。現に相当苦労した。あの野郎、代わりに働くのかと思いきや未だに酒ばかり飲んでやがる。別に他の女と遊んでもいいけど働け、それで養えといいたいが彼にその科白は意味がないことはこの数十年の付き合いで学習した。

下手に仕事に手を出せれると逆効果だ。それくらい彼に運がない。


だがそんなダリオがある日大金を持って帰ってきた。吃驚する私に偉そうに自分がそのお金を手に入れるまでの経緯を語ってくれたのだが


「へへっ、それでその貴族さまが勘違いしてくれてよォ。上手いこといったぜ!それにみろよ!この指輪!俺が頂いたのも知らず謝礼金まで『恩人』だからってくれたんだぜ!」


成程、その貴族はこの馬鹿にまんまと騙されたのか。気の毒とは思わないあたり私も貧民街の住人だが結婚指輪は返さないといけないと思いダリオを殴って警察に渡してきた。

ふゥ、昔色々あったから警察は私の登場にかなりビビっているわね。もう何もしないわよ、失礼ね。

それにしても・・・


「雨の日に崖から転落した馬車に乗っていった貴族さま・・・ね」


どこかで聞いた話だなぁと思いながらすっかり膨らみもうすぐ生まれてくる我が子がいるお腹を撫でた。ダリオじゃなくて私似に産むから安心しなさいね。





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