マンマ・ミーア!


もしも5






DIO視点


「・・・これは一体どういうことだァァアア!?」

DIOには二つのスタンドがある。一つは「世界」、もう一つは「隠者の紫」。DIOとジョナサンのスタンドが肉体の接続により授けられた力である。
ジョナサンのスタンドの本質は「知る」ものである。

――およそ7年、ディオ・ブランド―とジョナサン・ジョースターは偽りの親交の上の青春を送った。
何を考えているか分からない相手(ディオ)の心を知りたいというジョナサンの願いがスタンドとして具現化したそれは、他者の思考を読み取る。
一番結びつきが強い人間、DIOにしたら引力によって導かれた人間について知ることができる。だからその居場所を知ったりする力はまだ未発展の上入手したものでしかない。
このスタンドが完成した暁にはあらゆる情報を手にすることができる。情報とは時として最大の武器となる。よってこの一見大して力もない能力は使い方次第で「世界」に匹敵するのだ。

ジョナサンの肉体を通してDIOの手に、そしてその余波は現存する孫、曾孫にもリンクした。それほど膨大な力なのだ。
しかし一番その力を使いこなしているDIOは現在激怒している。


冒頭の科白、DIOの手の中に納まる一枚の写真にはある“女性”が映し出された。そしてその女性を守るように背後に佇む男はDIOと同じ格好で見知った顔をもつ。
男の名前は『ジョナサン・ジョースター』・・・嘗てDIOとの死闘に敗れ肉体を喰われた哀れな義兄弟。周囲の視線から明らかに目立つこの男は存在を感知されていないのが解る。何より何だかんだで100年ぶりに見た自身の肉体とジョナサンの首が繋がっていたことにも気づいた。

ここまでなら「おのれ・・・ジョオオオオジョオオオオ!!」と切っても切れない関係に忌ま忌ましいと吐き捨てる程度だろう。いや、もっと困惑するかもしれない。しかしそれ以上にDIOは困惑と激怒を感じる理由は別にある。ジョナサンの隣に立つのがエリナだったら「あの女ァアア!!」くらいの反応だが・・・

「母さん・・・」

DIOは100年間海底で考えていた計画がある。
母だ。亡き母を蘇らせる、海底に沈む前にもどうすれば母を“完全”に復活させるかだけを考え、いくつもの検証実験を繰り返した。その産物があの二人の騎士だがあれも失敗だった。
血を啜る、肉を喰らう、母が絶対にするはずがないことだ。しかし吸血鬼として復活するには必要なこと……だからそれはいい。問題は生前の精神を保ったまま甦るのかだ。

一か八かの賭けではいけない。確実に、絶対に、母が母として生き返らなければ意味がない。
DIOが、ディオが愛した母、アリア・ブランド―は美しかった・・・。

眠るように朝日を浴びながら冷たくなった母が二度と太陽に攫われないように・・・
あの恐ろしい朝を迎えない、永遠に夜の眷属に変わればいいのだと、DIOは信じていた。


しかし現実は彼の予想を斜めに進む。
写真の中の女性は陽射し中で微笑み、DIOが知っている輝きを放つ。

彼女が母なのか、アリア・ブランド―なのか、それが困惑の理由だ。

対して激怒した原因はやはりジョナサンに戻る。

――何故お前がそこにいる。
私が彼女の隣に、彼女の存在を今の今まで知らなかったのにお前は当たり前のようにそこにいるんだ!!


ギリっと唇を噛み締めすぎたせいで血が滲んだ。鼻孔に届いた匂いでそのことに気づき、ぶ厚い真っ赤な舌で口唇全体も舐めとる。部屋の薄暗さと燭台の怪しい炎の揺らめきがDIOの存在を余計に妖しくも美しいものに魅せた。





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