マンマ・ミーア!


もしも1





あれから転生したはいいがよくよく考えると私は息子がいつリボーンするのか知らない。
なんの偶然か転生しても容姿は前と一緒で、多分男女の差はあれど百年間変わっていないなら息子とそっくりな顔だ。人生二度目の女子高生ライフを送ったり、母親の勧めで宝塚に入ったりそこでオスカル役をバッチリ熟したり・・・

だけど宝塚の影響で私服が殆ど奇抜なものしかない。あれだ、「お姉さまに差し上げますわ」とか可愛い後輩たちがくれるものばかり着ていたせいだ。

そのまま流れで芸能界に入り、女優業に勤しんでいるとファンが結構いるらしい。へ〜物好きさんが多いんだね〜とマネージャーに云ったら呆れられた。


そう、私は本来の目的を忘れある意味で第三の人生を謳歌していた。そして息子のことを思い出したのは他でもない、今「あんたのファンだ」と何故か学ランを着た高身長の美青年が色紙を差し出してサインを強請ったその顔を見た瞬間である。


(じょじょじょじょじょじょ……承太郎!??)


『空条承太郎』・・・母親を救うべく先祖の宿敵、DIOを殺すため仲間と共にエジプトに旅発つ青年。口癖は「やれやれ」でスタンドの「オラオラオラ」ラッシュが特徴。


ま、待て私!!まだ彼と決まったわけではないぞ!
確かに学ランだ。帽子を被っている。何処の世界に体格も容姿も声までもそっくりな男がいるだろうか?いや、きっといる。


「あと、そこに『空条承太郎へ』っていうのも頼む」


・・・・・・終わった。

いや待て待て待て!!諦めるのは早い。
先述したように私はDIOに似ている。もうそっくりだ。あの世の水鏡に映しだされた息子が残念ながら服装のセンスが奇抜だったし、今の私も奇抜だ。違いといえば目の色くらいだ。

もしこの承太郎が三部開始の彼なら気づくはずだ。そしてもれなく私に対して「オラオラオラオラ」が繰り出される。

しかし彼はスタンドを出してこない。寧ろあの承太郎が頬を赤らめているだと?!!
ほ、本当にファンなのかしら・・・?


安心するのはまだだ。無駄なくらい警戒しておかないと私の三度目の人生の幕が下ろされてしまう。猫を被るのよ!一匹じゃ怖いから10匹くらい借りなければ!


サラサラと震えそうなペン先を何とか自然を装い、動かして色紙を彼に返した。そして背中を向けたことで漸く息が付けると安心した瞬間、奴と目が合った・・・




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[mokuji]

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