マンマ・ミーア!


喰種世界7





リゼ視点


どこで食事をしようか、夜の闇を彷徨っている時、私は彼女を見つけた。


そこには二人の若い女がいた。食事の好みとして、同性は好まない私だが、その時はなんとなく二人の様子を窺っていた。

(どう考えても片方は同類ね)

普通の人間なら昇れない場所で食事をしようとする金髪の女を喰種だと思った。ここからでは逆光で女の顔は見えないから赫眼は確認できないけど。


そのまま暇つぶしに二人を食べようかしら。そんなことを考えていると、私は信じられない光景を目にした。


「あ、ああ、っ……!」

黒髪の人間の女は恍惚とした表情で声を洩らす。その女の首元には金髪の女が齧りついているわけではない。月光で白く照らされた繊細な指先を突き刺していた。

眼を皿の様に見開き、その光景から目を離せない。

一分がとても長く感じた。

何か得体のしれない生き物に引き寄せられるかのように(この私がよ?)思わず物音をたててしまった。


途端、バッと顔をこちらに向ける金髪の女。

その女は、恐ろしく美しかった。



妖しく、

魅力的で、


もしその薔薇色の口唇から何か言葉が紡がれようものなら、屹度、それは私の心を支配してしまう魔性の篭った悪魔の囁き。

金髪も唯の金髪じゃない、黄金色の流れる様な髪は、白く透き通った肌に恐ろしく映える。
こちらをジッと見つめる鳩血色の凍り付くような眼差し。

その全てが私を虜にした。

ああ、欲しい。欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しいィィィィッ!!!



「あらぁ、随分と綺麗なお姉さんね」

軽口を叩くような話し方になったけど、内心物凄く動揺しているのが解る。私の心臓が激しく鼓動し、相手にも伝わってしまうんじゃないかって思い、焦る。

その焦りも誤魔化す様に、そして彼女の口から何か言ってほしくて早口で次の言葉を口にした。


「貴女…喰種なの?」


人間に近い匂い。喰種じゃないけど、人間でもない。なら彼女は、一体……。


だけど私は見てしまった。さっきまで圧倒的オーラで私を気圧していた彼女の瞳に、迷子の子どもが持つような孤独の色を。

よく見るとスラリとした黄金比を誇る身体に反し、顔にはまだ子どものあどけなさが薄らと感じられる。


そのせいか、庇護欲をそそられた。
もし彼女を私のモノにできたら、それはきっと、



「私と一緒に行きましょう?私は神代リゼ」

…――貴女のお名前は?


きっと最高に素敵だと思うの


***

後書き
百合ルートではないです。
お互いちょっとDIO様に似た魅力を感じ取って惹かれ合った感じです。
因みにまだ原作前の出来事。


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