マンマ・ミーア!


喰種世界6





善い子は皆寝ている時間。前世ではお父さんの活動時間です。


月明かりが夜に生きる魔物たちの正体を照らし出す……私は今、ちょっとした危機に陥っています。


「あらぁ、随分と綺麗なお姉さんね」


食事中にメガネが似合う知的な美人さんに出会いました。



覚えているでしょうか、私は人間と吸血鬼のハーフだということを。
双子の兄は間違いなく人間でした。でも私は生まれたときから父親の遺伝子が強かったらしく、月に一度、人間の血を吸わないと身体機能が低下し最悪死に至るのです。父亡き後、兄だけが知っていた私の秘密。トリップするまでずっと兄の血を吸わせて頂いてましたが、兄がいない現在、そう簡単にはいきません。

なぜならこの世界には喰種と呼ばれる人しか食べられない生き物がいるからです。人に仇名す存在を排除するため、CCG、白鳩、喰種捜査官、呼び方は色々ですが、警察とは別の機関が存在します。

【喰種】の特徴。
人間の食べ物は食べれない。食べたら不味い。吐き出すために食後にトイレに行くことが多い。
最低月一回の食事で生きていける。
コーヒーは飲める。
赫子と呼ばれる武器を持つ。
外見は殆ど人と同じ。だけど目が赤黒くなる。
人間離れした身体能力。


まず想像して欲しい。
場所はビルの屋上。どう考えても普通の人間が昇ってこれる所じゃない。
出血多量で死にかけの女性。
その女性の傍らに立ち、首に指を突っ込んでズッキュン、ズッキュンさせている女。
ついでに目がなんか赤い。

それが今の私の状態である。
なぜメガネの女性がこんなところにいるかは解らないが、少なくとも私が喰種だと疑われる要素だけは山のようにある。

やばい。


「貴女…喰種なの?」


つ、通報だけは…やめて!
違うけど!違うけど目撃者残しておいたらヤバいし、前世みたいに個人が吸血パック取り寄せてたら喰種と間違われて捜査官に捕まっちゃうので仕方なく殺してたけど!

だって最期まで食べないとうっかりゾンビにしちゃうから!兄さんは大丈夫だったけど他の人にやったらゾンビになったし!

言い訳だけは沢山あるのに絶対この世界の人信じてくれないよ。
前にチラッと喰種を退治している捜査官目撃したけど、「屑が何を言っている!」って容赦なかったし。お父さんが承太郎さんにオラオラされて砂漠に散布されたくらい容赦なかったし。

どうしよう、彼女を、殺そうか。でも必要最低限の殺ししかしないって決めたし、ううっ。


頭を抱えていると彼女はゆっくり私に近づいてきて、そのまま


ギュ。

抱きしめた。


えっ?


「私と一緒に行きましょう?私は神代リゼ」

…――貴女のお名前は?


そう訊ねてきた彼女、リゼさんは、身体から人ではありえないものが生えていた。でも不思議と怖くない。なぜなら、その時の彼女の雰囲気が死んだお父さんに似ていたのだから…。



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