砂上の楼閣 | ナノ


03



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まず最初に言わせてください。

風影ばんざーーーい!!


え?前回嫌がっていた?
そうだよ、でもさ、でもさ


「風影さま〜〜」
「あそんで〜」
「だめ!おれとあそぶの!」
「遊ぶんじゃなくてしゅぎょーみてください!」
「お話してーー」


キャッキャッ

天使たちに囲まれています。右を見ても左を見ても子供子供・・・・
一応言っておくが俺は決してロリコンでもショタコンでもない、ただ可愛いもの綺麗なものを愛でたいだけである。


「(どうせだから次世代に芸術とはなんぞやを語って行く行くの里全体の美的感覚をあげるか)ああ、順番だよ・・・その前にお話をしようか。皆は『芸術』とは何だと思う?」


するとみんな一斉に首を傾げた中、一人だけ俺の質問に答える子がいた。


「僕は永久の美だと思います。傀儡のように長く美しく後々まで残っていくものこそそう呼ぶにふさわしい」

その子供はこの中で一番敏く、賢く、そして美しかった。

萌えるような、あ、間違えた、燃えるような赤い髪は今は亡き同期の青年と重なる、ああ、彼の息子か・・・

趣味で作っている傀儡は何体か里一番の演者といわれるチヨ様に渡しているためコミ障の俺には珍しく親しい友人だったが戦死して以来彼の家には寄り付かなかったからな。
息子は、確か・・・

「サソリ(だったかな?あれ?そーいえばどっかで聞いたというより覚えのある様な・・・)」

「!!はい!覚えていてくれたんですか?」

嬉しい!と可愛らしい顔いっぱいに笑顔を浮かべる少年にまさか今まで忘れてましたし名前もおぼろげでしたとはいえない。
罪悪感を隠しつつ、芸術について既に理解している(もしかしたら昔俺がいったのかもしれない)彼の頭を撫でて癒されていた。


それにしてもサソリ・・・

その夜、こう、咽に小骨がひっかかったような感じに悩まされ、必死で思い出すこと一時間。
風影邸から絶叫が聞こえた。




サソリサイド


昔から憧れている人がいる。
元々とうさまの友人で忙しいのに僕の家に来てくれていた彼は酒の席でとうさまに傀儡はいい、っていっていた。どこがいいんだい?ってとうさまがきくと、長く美しいまま、後の世にまで残る芸術だからだって見たこともないくらい優しい目でチヨばあ様にって持ってきた傀儡に視線を向けていたのを覚えている。そしてそのとき僕が抱いた感情も。


あの人は風影になった。とうさまもかあさまも戦争でなくなって、僕はチヨばあさまにあの人が好きだと言っていた傀儡を教えてもらった。
初めて作ったのはとうさまでもなく、かあさまでもない、あの人だ。
あの人の顔を思い出して作ったそれは、とても本人に似ても似つかない出来で、うまくできたらあの人に見せようと思っていたから悲しくて寂しくて仕方がなかった。

あんまりにも寂しいからとうさまたちをつくったけどこっちはよく似ていると思う。
何でだろう。


アカデミーにあの人が来る。
忙しくて僕の家に来なかったのにって嫉妬したけど、今はあの人に纏わりつく邪魔な奴らをどうにかしないといけない。

そしてあの人が昔きいたあの話をした。
他の奴らは理解できないのか首を傾げている、なんて馬鹿っぽいんだろう。
僕は一人優越感に浸りながら、子供らしくあの人の質問に答えた。僕のこと覚えてくれているかな・・・ってドキドキしていたらあの人は

「サソリ  」

嬉しい嬉しい嬉しい!!覚えていてくれた!
そのあと僕だけあの人に頭を撫でてもらった!
僕も傀儡を作っているけどうまくいかない、風影さまの傀儡がみたい!って言ったら今度一緒に作ろうかって言ってくれた!


近くであの人を見て気づいた。
この人は人が作れるものじゃないって。
木材でどれだけ似せてその造形を再現しても、本物には到底及ばない。
もしあの人自身が傀儡の身体になれたら・・・そうだ!あの人ごと傀儡にすればいい、磁遁っていう未知の新しい術を開発したあの人のように、僕も人傀儡を完成させよう。
あの人のすべてが後々まで残るように、
あの人の大好きな傀儡になれたらきっと僕のことをもっと見てくれる!

でもそうしたら僕が死んじゃうとあの人を他の奴に取られちゃうな。
そうだ、僕も一緒に傀儡になればいい
そうしたらとうさまやかあさまみたいにお別れしなくてもいいんだ。
ずっと、ずっと・・・

長く美しく永久に一緒にいられるよ



***


夢主の思惑(次世代の芸術に関する洗脳)が自身の死亡フラグ建設に至る。
やっと今まで「あれ?」って思っていたことがつながって冷や汗ダラダラな夢主とぶっとんだ幼児、サソリのお話でした。




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