砂上の楼閣 | ナノ


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俺は今まで無神論者であった。
だって信じるには世界中に神とかいすぎじゃねぇ?

日本なんて多神教だとかで心底どうでもいいような神様までいるじゃん。
伊邪那美と伊邪那岐が人間らしい生殖行動で山の神だとか火の神だとか作ったのに伊邪那美が死んだ後伊邪那岐が禊した際に目とか鼻とかから生まれたのがあの天照たちなんだから、じゃあ伊邪那美は最初からいらないじゃんって思うわけ。

ギリシャなんてあのアテナが生まれたのはゼウスが頭痛で苦しんでいて痛さのあまり斧で頭かち割ったら出てきたんだよ?

もう神なんて信じてなんになる…


だから輪廻転生?そんなものあるわけない…

前世の記憶があります、とかテレビで言っている人とかただ目立ちたいだけでしょ?

日々そんな風に考えていた俺、苗字名前は交通事故であっさり死にました。




等々死んだらそれまでと思っていましたが、俺、


前世の記憶を持って生まれました。






おいぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!


まあ脳内でハッスルする赤ん坊(傍から見ると泣き叫んでいるただ親泣かせな暴れん坊)
に転生してから早20数年。
え?早すぎる?だって俺みたいな平凡ヤローの人生聞きたくないでしょ?まだ二丁目のおばあちゃんのお話聞いた方がこう、知恵袋的なものが結構生活の役に立つし?

前世と比較して顔立ちは変わらないのに髪と目の色がなんか微妙な感じになったのにショックを受けてる。
前は黒髪黒目(おい!普通とかいうな!今の日本は逆に染めている人の方が多いから珍しいんだぞ)
今は青っぽい黒髪に金色の目…おいおい何人に転生してんだよ?と赤ん坊の頃初めて自分の顔を見た時に思った。でも両親は普通に日本語話していたけど…

あれか?世に聞く転生特典なるもので翻訳されているのか?
だって両親の着てる服、どっかの民族衣装?って聞きたくなるくらい変なんだもん。

あ、俺大学は美大です。俺の美的感覚にこの服は不満、この異様にプ二プ二したガキの手だと鋏も使えないため自由になったら絶対服を作ってやる。そんな野望に燃えていた俺に今まで散々神のことを馬鹿にした罰が下ったのだろう、


転生した先が忍者の国だった――――――っ!!!


何故?Why?何故?
大事なことだから三回言ったけど忍者の国でも俺が知っているリアルなのは戦国時代の風魔小太郎だとか猿飛佐助だよ?でもそれは日本の忍びで親の髪型や服装、それから子供部屋からだと見えるものは限られているから確かめられないが、家の構造的にリアルの過去に転生したのではないといえる。

前世の知識とかみ合わないからまさか、そう、妹がネットで愛用して三度の飯よりこれがないと生きていけないとかのたまっていた『夢小説』ですか?二次元ですか?

やべーよ、二次元の忍って俺教育テレビの方とジャンプの古株さんしか知らないけど出来るならば前者がいい。後者とか最初はまあ楽しそうだけど後半戦争だからね?連載一年以上戦争続けているからね?前者だと夢で王道な主人公と同世代という展開も受け入れられる・・・・だがしかし、後者ならまじ死亡フラグだ。主人公と一緒に行動?危険しかないじゃん。俺デイダラとか飛段とかあーいう馬鹿っぽいタイプ好きだったけどそこに行きたいですか?って言われたら、はい・わかりました・善処します=いいえの日本人らしからず、Noトリップ・No転生です。

あれだ、憧れは現実じゃ叶わないから抱くものだよ。
こんなやついればなあとか思ったことがないとは言い切れないけど、自分の命かけてまで叶えたい願いじゃない。ましてや一回死んだ身だ。態々もう一回死のうとは思わん、命大事に、これが今生のスローガンだ。


だからここが死亡フラグしかない世界としった瞬間、俺は修行した。
可愛らしいショタやロリっ子たちに(あ〜この子にはあの服の方が似合うだろうな〜)と着飾りたい衝動を抑え、なんでも有名な画家らしいおっさんの絵のレベルの下手さに切れそうになったり、傀儡という、この世界で唯一の俺の芸術を昇華してくれそうな素晴らしい造形にド嵌りしつつ、俺は日々只管努力した。


その成果、周りから覚めた奴呼ばわりされても




「(俺は死にたくないんだよ!元平和ボケした現代っ子だとお前らとスペックとか気持ちの持ちようが違うんだよ!!)やるか(コノヤロー!!あ、でもあと1年待って、今やったら俺負ける)」


思ってることと言ってることがごっちゃになって正直何言ったか忘れたけど、それ以来誰も冷やかしにも来なくなった。べ、別に寂しくないぞ!!




そして今この危険が一杯な世界に転生して20数年、前世と同じくらいの年になってやっと死なない程度の強さと大人の余裕というものを会得した。

***



とある忍びサイド


俺は砂の忍びだ。今は中忍だがまああと数年もしたら上忍になれると自負している。
そんな同世代ではそこそこ優秀とされている俺よりも天才がこの里にはいる。

あいつは昔から俺らより一歩どころか砂から木の葉くらいの距離(中忍が頑張っても三日かかる距離)は前にいた。しかも俺がはなたれ小僧で遊ぶことしか興味がなかった時から黙々と一人修行していたのもあったんだろう、8歳で上忍にまで登りつめ、今じゃ二代目風影様に絶大の信頼を寄せられている実力者だ。

独自に術を開発し、磁遁を駆使した戦術で全戦全勝。かの有名なモンザエモンに勝るとも劣らないとされる傀儡を趣味で作っていて裏ではアイツの造った作品は小国の国家財産に匹敵する金額で取引されているから、もう俺は神はあいつに何物与えてんの?アイツ人間じゃない、もう神の子とかでよくねぇ?って思ってしまう。

容姿もこの里で一番整っているから20代の今は里中の女たちから毎日告白されてはことわっている。彫りの深い顔のパーツに陽にあたると青く見える黒髪や月明かりよりも闇夜に映える金色の目はまさに生きた芸術だ!とか国中の芸術家の間で言われているらしい。
噂じゃ他国でビンゴブックに載った写真を飾るやつまでいるってふざけた話があるが、強ち否定できないのが怖い。ただの写真ならもうこの里の大半が自宅に飾ってるという事実があるし。


近々二代目さまが引退し、新しい風影が誕生するって実しやかに噂されているが誰が三代目風影を名乗るか里中が暗黙の了解だ。あいつ以外この里の上に立つにふさわしい忍びはいない。

まあ俺はあいつのために働くか……なあ白砂(かぜかげさま)



***

夢主に死亡フラグがたった。本人ただ死にたくない一心で修行→任務達成→やべー前回死にそうだった、もっと修行しないと!→修行増える→周囲勘違い、やる気満々だなで、さらにレベルアップした任務→その繰り返し

そして彼はとうとう風影になる。




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