サソリ、中忍試験を受ける
そこにいるだけで目を惹く存在感。
赤く長めのショートヘアは毛先がクルンと曲がったやや癖っ毛でフワフワしていた。
首だけ振り返ったその顔に浮かぶパーツはどれも絶妙な配置で置かれており、アーモンド型だが子供らしい大きな瞳は綺麗な紅茶色。白い肌も赤い髪がよく映えるので一見するとよくできた人形のような子どもだと思った。
それが生きた人間だといえるのは俺を見てふんわりと微笑んだから。あまりにも可愛らしい笑顔にちょこんと傾げた動作が庇護欲を誘った。
砂隠れ特有のワンピース型の衣装に身を包んでいるから性別は断言できないが女の子といっても信じられるほど愛らしい子どもだというのが第一印象。
だからこそ出来過ぎた人形のようなその子が口を開いた瞬間誰もが我が目と耳を疑った。
「ハッ!まるでゴミのようだ」
中忍選抜試験本戦に向けた予選にて。引率の上忍師が用意した豪華な椅子に同じメンバーが添えた柔らかなクッションに背中を預けて踏ん反り返りながら鼻で哂ったのがその子ども。
見た目は子ども、中身はおっさん通り越したジジイ、それが彼、サソリである。
「折角この俺が今更中忍選抜試験なんぞに参加してやってんだ…ちっとはマシな奴出しやがれ」
どこからか差し出されたジュースを啜るサソリに対戦相手のカカシは額に青筋を浮かべた。
「(何アイツ…あんなのが砂の忍びなの?)」
見るからに中忍というか忍そのものを舐め腐った態度の子どもだ。カカシより年上らしいが今まで一回も中忍試験を受けていないサソリが果たしてここまででかい態度を執れるのか不思議でならない。余程実力があるのか単に馬鹿で世間知らずなのか。少なくとも隣で騒いでいるオビトのほうがマシだ。
そんなカカシの肩をポンと叩いたのは彼の担当上忍のミナトだった。
「カカシ、油断したらダメだよ」
「ミナト先生…ですが」
「ん、彼はああ見えてかなりの実力者だよ。気を抜いたら俺でもヤバいかもしれない」
「!!」
黄色い閃光とまで謂われている師がそこまでいるとは……カカシは驚愕の眼差しをそのままサソリへと向けた。
「おい、本戦は三代目の隣に特等席を用意しておけよ」
「いや、流石にそれは…『あ゛?!』準備いたします」
「はっ、当然だ。俺の活躍を白砂に魅せて惚れ直させる、一つでもミスしてみろ、テメェらは傀儡コースだからな」
「「「「はいサソリ様」」」」
……。
「先生、あれが…?」
「う、うん。多分、ね?」
***
やや捏造。
ミナト班と同時期に中忍選抜試験を受けるため泣く泣く木の葉へ出張したサソリさん。
人柱力だけど砂隠れを掌握済みな俺様。
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