砂上の楼閣 | ナノ


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うちはイタチは白砂のことをそれほど知らない。穢土転生で甦った身では不毛と分かっているが、彼は白砂が好きだった。生前、白砂は口もきけなかったし、彼の周りには必ずサソリ本人がいた。要するに恋路の邪魔をされていたのである。

強引な手段に出ることも可能だったが、イタチにはサスケという、蔑ろには出来ない存在がいたため、奇しくもイタチの生が終わりを迎えるその時まで、彼と白砂の間には何もなかった。

だが今、イタチは白砂の傍にいる。それでいいじゃないかと、イタチは過去ではなく現在を見つめていた。



うちはサスケは他者の影響を受けやすい、感受性が高い子どもだった。
白砂と会って僅か数刻。イタチの態度に驚きつつ、白砂という存在から目が離せない。サスケは初めて感じる胸の高鳴りに戸惑い、だがその身体に流れる血が「絶対に離すな!」と訴えてくる。正直な話、イタチとサソリが実力行使に出た瞬間、諦めという文字が脳裏に過った。しかし唯一無二の友が云っていたじゃないか、「絶対に諦めるなってばよ!」と奮い立たせ、ここまで来た。


サスケは白砂を手に入れ、イタチから真実を聞き出し、それから木の葉を潰そうと考えていた。



サソリは冗談じゃねぇ!と内でも外でも叫ぶ。
赤茶色の瞳には、獣のような凶暴さが見え隠れしていて、白砂に近寄るテメェらをまとめてぶっ殺してやる!と謂わんばかりな態度だ。

サソリは白砂のことを誰よりも理解していると自負している。白砂の風影時代を知る里の重鎮はほぼ死んでいるし、数か月前まで白砂はサソリの人傀儡として自我はあるが、それを表には出せない状態だった。サソリの命の危機を前に、自由に動けるようになった白砂。原因も理由も分からないこの不可思議な現象が何かと問われたら、サソリは愛の力だという。


カブトが白砂に愛の告白をした瞬間、サソリは「もう俺と結婚してんだよ!新婚なめんなァ!」と本気でカブトをぶん殴った。ついでに吹っ飛んだカブトに生えている尻尾が近くに居るイタチに当たるように計算して。


サッと避けるイタチに舌打ちを一つ。余程強く飛ばしたのか、岩壁にぽっかりと穴が開いた。
薄暗い空と通り抜けてきた森の木々が見える。カブトは気絶したのか、瓦礫の下から動く気配はない。


「白砂、手が痛い」

くいくいと白砂の袖を引っ張り、上目遣いで痛い痛いと訴えるサソリ。お前人傀儡だから痛さなんて核を貫かれないと感じないだろうが、と言いたいが天下のサソリ様相手に言えるのはイタチかサスケしかいない。当然彼らは言った。莫迦じゃないか、と。ついでに酷く冷めた眼でサソリを見つめる。


そんな兄弟の視線なんて気にせず、サソリは猶も続ける。さりげなく白砂にすり寄り、遊女のように慣れた動作でしな垂れる。丁度サソリの頬が白砂の胸元にくる位置。最近のサソリはその身長差を計算して自身の身体(傀儡)を作成している。

ついでに指を搦めるのも忘れない。サソリは勝ち誇ったようなドヤ顔を兄弟に見せ、フンと鼻で哂った。



カブトに判断してもらおうとしてここまでやってきた三人。だがそのカブトが白砂に惚れ、サソリに沈められた。結局彼らはまた(くだらない)喧嘩を始めるのであった。



「あの〜」

なにしてんの?と、気まずげに声をかけてきた水月と無言で佇む重悟が来るまで、そのやりとりは続いた。



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