砂上の楼閣 | ナノ


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「………」

彼、薬師カブトは困惑している。

目の前で偉そうに佇むのはカブトの元上司なら大喜びするだろう、天才且つ美形。元上司は才能豊かな逸材が大好きだ。それでかつ、美形なら猶更。発展途上の美少年も大好物な犯罪者である。

そんな元上司・大蛇丸でも、天才な美形は全て好きなわけではない。
かつて彼は酒に酔った勢いで言った。

「サソリなんてただのちっこいおっさんよ!」
「イタチなんてただの老け顔じゃない!」

それは、サソリとペアを組んでからすぐのこと。
そして、イタチに返り討ちにされた日のこと。


カブトにはよくわからないが、大蛇丸には彼なりの基準があるらしい。逆に大蛇丸のお気に入りとも呼べるサスケは、カブトにしたら唯の我儘な子どもだ。


賢いカブトは口には出さなかったが、サスケよりもイタチを気に入っていた。それは彼自身の生き方を重ねていたのかもしれない。


サソリとカブトの接点はある。だがカブトはサソリの素顔を知らない。ただ傀儡や自室にに引きこもる変人としか認識していなかった。すると必然的に、サソリが寵愛する人傀儡の姿も見たことは、ない。


カブトと大蛇丸の好みは違う。カブトが好きなのは外見でも、才能でもない。
時に人を魅了する、人を惹きつけ、その後に着いて行きたいと思わせる、一種のカリスマ性。
傾向は違えど、それは大蛇丸であったり、その片鱗が見え隠れするうずまきナルトであったりする。
自分の生き方に疑問を抱く男、偽り続ける男、自分というものがなかった男は、自分の手を引いてくれる、『誰か』を求めていた。


だから――…


「僕と結婚してください」


初めて対面した三代目風影こと、白砂のカリスマオーラに魅せられたのは、致し方ない。





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