砂上の楼閣 | ナノ


再スタート(サソリ)



 朝起きて「おはよう」を云って微笑む、二人で話し合った結果寝室は地上に造ることになり俺と白砂の愛の巣には毎朝眩しい朝日が差し込む。だが本当に眩しいのは朝日ではなく俺の白砂だ。端正な顔に俺だけに見せる柔らかな笑みを携えて迎える一日の始まり。この上ない幸せ。嗚呼、ここは楽園か、俺は毎朝喜びを噛み締めて「おはよう」を返してきた。



そう、返してきたのだ。



なのに!!


「あ、う、ぶぅ、っあ、うう!」

「おおサソリや。起きたのかえ」

よしよしと頭を撫でる妖怪皺くちゃババアは記憶にあるよりも若い。若干皺も少ない。そして何よりも俺の身体が生身だ、ちっさい、自分で生きていくことも出来ない赤ん坊だ。
こんな身体じゃ白砂に相手されない!!と赤子の餅肌を可哀想なくらい青ざめたサソリはどこかズレていた。彼の世界は白砂だけで構成されているといってもいい、世界が平和になり、二人だけの生活はより一層サソリの依存度を高めていた。

 数日後、判明したのはこの世界は所謂二度目の世界だということ。両親祖母ともに昔と同じ、そして最愛の白砂は相も変わらず三代目だった。父の友人として俺を見に来た白砂は一瞬驚いたようだが、すぐに俺の好きな笑みを浮かべて名前を呼ぶ。父親が俺を受け取ろうとしたが誰が白砂から離れて堪るものか!絶対に離すもんかとチャクラを練って無理矢理吸着した。

「アハハ!サソリは凄いな!もうチャクラが練れるのか!」
「・・・おい、」
「ああ、御免。白砂はサソリと暫くお留守番しておくれ」
「・・・はぁ。」
「ん、宜しくな」

一応親だから許すがオレ以外と会話するんじゃねぇと胸倉を紅葉のような手の平ペチぺチ叩いた。

「うう゛〜〜〜ッ!!」
「……サソリ、か?」
「ッ!!」

気付いた!気づいてくれた!自由の身体ならピョンピョン跳ね飛ぬほどの歓喜に浸っていると同時に絶望した。だって白砂は風影だ。前もそうだが、一夜限りとはいえオレ以外の人間と関係を持っていた。あの頃は相手にされないその他のゴミ屑どもをせせら笑ったが、長年白砂は俺のモノとして扱ってきた俺が許せるはずがない。
 だが俺はその他大勢を威圧する肉体もなく実力も発揮できない現実。嗚呼、なんてこった!!訴える様な眼差しで俺だけだよな?浮気しないよね?と見つめるなんて生易しい、獲物を見る猛禽類よりもはっきりした瞳孔が開ききった壊れた人間の双眸だ。とても生まれたばかりの無垢な赤子が持つはずのない目に慣れていた三代目は肩を竦めて安心させるような優しい眼差しで見つめ返した。

「大丈夫だ、サソリ。俺にはお前だけだよ」

その一言でサソリの頬は薔薇色に染まり、こんなに愛らしい赤子がいるのかと感嘆する愛嬌を発揮した。




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