砂上の楼閣 | ナノ


04




「何で…何で……何で我愛羅ばっかり!!


「やっと、まだ風影になったばかりなんだぞ…」


落ち着けという言葉にナルトの怒りは爆発したように癇を切ったように激情を吐露した。その足元には重たい瞼を下ろし、深い眠りについている我愛羅。
その胸は上下することなく、口から規則正しい呼吸音もない。

我愛羅の死を嘆き、悲しみ、涙を流すナルトをみてチヨは何を思ったのだろうか。
我愛羅の下に膝をつき、その身体にチャクラを流し出した。

戸惑うナルトにチヨがしようとしていることをサクラが告げる。
無言だが、白眼でその様子を窺うネジにはチヨの行動の行きつく先を知らせた。


チャクラが足りないと悔しげなチヨに自ら進んでチャクラを差し出すナルト。
そんな彼に、チヨは今までの全てを懺悔するように、未来を繋げる若き忍びたちに言葉を残し、己の全てを我愛羅に捧げ、事切れた。








<俺・・・俺とは誰だ・・・・?>


ひび割れた地に幼い少年が一人座り込み顔を両の手で覆っている。
彼にはいない。誰も傍にいない。


そう、思っていた。


“我愛羅”と呼ぶ声が聞こえる。だが振り向くことはない。それが自分のことだと分からないからだ。


人は呼びかけられた時、自分じゃないと思いこんでいた場合、どうすればそれが自分だと自覚するか?
答えは簡単だ。触れればいい。


「ほら、お前のことだよ」


トントンと優しく叩かれた頭。勿論我愛羅には未知な体験だ。
昔も、風影となった今も我愛羅にそんな、普通の親兄弟の触れ合いなんて・・・
頭に置かれた手は小さくても大きくても我愛羅の頭を掴めるほど大きくて。優しく温かくて。

我愛羅が憧れていたものが感じられた・・・


面を上げれば知っているけど知らない顔がそこにあった。


「いっておいで」


後ろからナルトの声が聞こえる。行ってもいいのだろうか?


「いいよ。だって“我愛羅”を呼んでるんだからさ、当たり前だろう」


何度も何度も呼んでくれる初めての“友”の下に行きたい。だけど


「お前も一緒がいい、来て」


目の前の男の服を引けば困った風に笑われた。


「俺はいけない。でもお前の傍に居よう」


――・・・トン!


背中を押され、前のめりになりそうになったがナルトが手を掴んでくれた。
引かれた手と身体はナルト達の所に一歩、また一歩と近づいていった。


後ろを振り返ると優しそうな笑みを浮かべた三代目風影がいた。




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