09
サスケサイド
「まさかサスケまでここにくるとはな……」
そういってソイツはゆるりと視線を投げかけた。
美形には慣れている自分でも目を奪われるような麗人の視線を独占しているのは俺だ。兄さんじゃない、隣の赤砂のサソリとかいう暁を脱退したらしい男でもない。
歓喜で口角が上がりそうになるのを必死で留める。自分を視界に映してほしいとあのイタチが熱い視線を送っても見向きもしないなんて!
サソリから今にも獰猛な獣のような鋭い視線を向けられるがどうでもいい。俺はソイツに平静を装って問いかけた。
「……あんたはだれだ?」
早く早く知りたいという俺の焦燥すら解っているかのように、さらに焦らせるように間をあけてゆっくりと元風影で今はサソリの傀儡だと答えた。…一番知りたいことじゃない。俺はあんたの名前が知りたいんだ。
俺には教えたくないのか、今更ながらに立場上敵対していることを思い出す。自分で選んだ道だが一瞬後悔してしまう。イタチも同じなのか、いや、イタチは味方のはずだ。なら何故だ?……嗚呼そうか、イタチはもう『死んでいる』からこそ男とは共に生きられないのか。
ふんぞり返るサソリが羨ましいと思ってしまうくらい、俺は今あったばかりの風影が気になって仕方がなかった。
だがサソリは風影の全てを自分のものにしたいのか、叫んだ。
「もう我慢できない!!白砂!お前は俺のモノだ!美しく完璧なお前の隣に相応しいのはこんな老け顔でも青臭い餓鬼でもないッ!俺だッ、俺だけだ!!」
おい、確かに兄さんは歳の割に老け顔だし老熟した精神だが俺はまともだ。青臭い餓鬼っていうのはキバやナルトのことを云うんだ。
「サソリさんだって唯のちっこいおっさんじゃないですか」
「年寄りの阿婆擦れは黙ってろ」
トビたちが云っていたし。暁を脱退したのに生きていたのは大蛇丸とサソリくらいだから新人は必ずその話をされる。大蛇丸は兎も角サソリの「愛に生きる」とか巫山戯ているとしか思えない。何故かトビはそれで許したが。
「ああ?上等じゃねぇかクソガキ共。誰が何と言おうと白砂に相応しいのは俺だけだ」
「……なら第三者に判断してもらおう」
「ああ、イタチの言う通りだ。丁度近くにカブトがいる」
「ならそいつにしよう」
「フン……」
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