08
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終わり、でも俺にとっては明日も変わりようのない日々である。
えっと、その……俺、壊れました。
バラバラです。
首も手足も内蔵代わりの武器もぜ〜んぶ彼方此方に飛び散ってます。
おいいぃぃぃい!!!えっ、マジどうしようこれ、俺確かに意識はあるけど自分で自分の身体治せないよ?完全に首がないアンパンマンだよ?でもこれをやったのはチヨ様チームのピンクちゃんだ。俺=アンパンマンなら、あっちはチヨ様=バイキンマンでピンクちゃん=ドキンちゃん?でも何故かあのピンクちゃんからは小悪魔らしさよりも漢らしさを感じてしまう。
あ、うちのサソリはメロンパンダちゃんで宜しく。
お〜け〜、落ち着こう、取りあえず現状を把握しよう。
俺=動けない、バラバラ。
サソリ=上半身裸、マント脱いじゃった
チヨ様=結構弱っている
ピンクちゃん=若さ故かまだまだいけるぜ!しかも今は解毒薬使用中。三分間はスター状態の無敵ちゃん。
う、どうなるだろう、これ。いや、サソリに勝ってもらわないとさ、俺絶対焼却炉行のゴミだよ?だって人傀儡治せるのって絶対サソリだけだし。あーみえてサソリって意外と物は大切にしてくれるから屹度治してくれるだろうけどもしサソリが負けることがあれば俺は唯のゴミだ。しかも自然に悪い、三代目の弔いとか言われて意識あるのに燃やされる。運良くて砂の展示館にでも置かれて一生暗~い展示室で滅多にこない客にじろじろ見られて一生馬鹿にされるんだ!
アカデミー生の見学で「あれが最強って言われてたけど子供に負けた三代目(笑)よ」
「うわ〜だっせー」「カッコ悪いね」とか教師と生徒に言われるんだ泣
そもそも悪いのは調子にのったサソリなんだぞ!
相手が年寄りと小娘だーとか言って余裕ぶっこいて遊んでいたらヒルコ壊されたり、ならとっておき見せてやるぜ!とか言って俺を出したり、俺の砂鉄にあろうことか毒を染み込ませて使ったり、ピンクちゃんが解毒薬っぽいの打ってるーー!って俺が(心の中で)叫んだのに無理やり突っ込ませるから俺の身体は・・・ううッ。
って、一人泣いていたらいつの間にかサソリがピンチです。
ええ〜〜〜〜〜〜!!?
何やってんのあの子!ほんとどうしようもない子だよ!
俺と同じくらいバラバラにされた。ってかあのピンクちゃんマジ怖い(゚Д゚;)
た、助けてー二代目―!昔馬鹿にしたこと謝るよー!
でもサソリは自分で身体再生(?)させた。スゲ――!お、おれも出来るかな?
そんでもって持ってる傀儡全部出した。あれだ、数で勝負か。
チヨさまがモンザエモンの近松使ってるけど俺があげたものも出してきた。うわ!なんか恥ずかしい!
あれ?サソリの反応が・・・
***
サソリサイド
あろうことかあの小娘、俺の白砂をぶっ壊しやがった。ふざけんな、俺がどれ程の愛を捧げてきた至高の一体だぞ!後でデイダラにネジ一本だろうと絶対に探させてやる。何ならイタチを呼んで部品を探す。
ムカついたから自分自身を久しぶりに使ったら久しぶり過ぎてどこに何を入れたか曖昧で動きが遅く、その隙を突かれてしまった。不覚だ。
チヨばあが何かこそこそ言ってる。
うっとおしくなってきたから数で一気に畳み込んでやろうとしたがやるな、確実に連携組んで倒して行く様子になんかモグラたたきみたいなことしている小娘が面白くて観察しすぎたらしい。変なボール投げられてあえなく今の身体を手放した。
不意をついた攻撃だったが流石チヨバア、見破っていたらしく、昔俺が作ったとかいって初っ端に出してきた父と母で俺の核を狙ってきた。ふ、甘いな、俺の動揺を誘いたかったんだろうが生憎俺は寧ろ俺の知らない三代目を知っていた父と母が嫌いだ。二人が死んでから三代目と映っている写真をみて俺がどんだけ嫉妬したか身内の癖に知らないのかよ!
だが甘いのは俺もだった。
この身体(今使っている自分の傀儡)に油さすの忘れていただと・・・。
何百体もあると、三代目に掛ける時間を減らしたくはなかったから他の傀儡のメンテナンスが面倒でたま〜に何体か適当にしてたけど、まさかこんな時にその一体に憑依するとか最悪だ。
迫りくる刃を避けたくても身体が動かない。くそっ、俺が死んだら三代目は、白砂はどうなる?砂の芸術観もないくそったれどもにいいように使われ蹂躙され続けるのか?俺の白砂なら美術館にも寄贈されること間違いなしだが・・・。
ああ、どうすればいい。
白砂!
***
あ、ども。サソリが自力で身体を戻したのをみて頑張ってみたら部分的だけど再生できました。うん、俺ってばやれば出来る子だ!流石!
自画自賛してんじゃねーって言わないで。
取りあえず再生したとはいえ片手はまだくっ付いていないし、腹も抉られたみたいに穴開いてるし、完璧とは言い難いけど飛ぶことは出来る。
だが浮遊した途端、目の前で亡き親友とその美人の奥さんに刺されそうなサソリにギャー――!って悲鳴あげそうになった。ついでに一回墜落したせいで足の方また壊れた。
おいいい!!
その攻撃、待った〜〜〜!!
急いで砂鉄だして鳥のように飛び立ちサソリの身体を抱きしめるようにしてチヨさまの攻撃から庇う。グサリと刺さったのは俺の身体とサソリの身体。だが、俺の身体が邪魔して何とかサソリの核からはズレているから大丈夫だろう。
あっぶね〜〜〜・・・
いや〜〜良かったねサソリ……ってなんで瞳孔かっぴらきで俺のこと凝視してんの?
えっ、なんでチヨさまとピンクちゃんもこっちガン見してんの?
自分の身体をよく見てみる。二十年近く付き合っている傀儡の(ボロボロだが)身体だね。
あ、そうか。俺ってついさっきまで意識はあったけど殆ど自分じゃ動かせなかったから勝手に動いて驚いてんだね。成程、名前くん納得です、うん。
ん?あれ、これってやばくね?
どうしよう、取りあえず誤魔化そうにもなにか言わなくちゃ・・・
ってか俺って話せるのか?イヤ、今なら出来るさ!だって動かせたんだもん!
よ、よしサソリの呪縛から漸く抜け出せるかもしれないチャンスだ!この機会にチヨバアさまに俺が(意識だけど)生きていることをお伝えして、昔隠しておいた貯金をおろしてどこか静かなところで生きよう!そうだ!それがいい。
……サソリさんこの手は何ですか。何で俺の(残っている)片手と君の手で印を組んでるの?しかもこれって瞬身の印?
あ、もしかしてまた俺ってば変なフラグ立てちゃった感じですか?
***
サソリサイド
もう駄目だ、そう悟った。
だがいつまでたっても死は訪れない。何故だ?チヨバアなら確実に核を貫いているはず・・・っ!!?
俺の身体を抱きしめる三代目。それが俺を庇ったため核に刺さるのを阻止していた。
吃驚し、よく三代目を見ればあの小娘にぶっ壊されたせいか、手足も揃っていないし下半身もないに等しい状態だ。倒れていたところからここまでは恐らく背にある砂鉄の翼で跳んできたことが伺えるが白砂には俺と違い意識がなかったはずだ。
初めは白砂も俺と同じように人傀儡として生きていけるはずだったが完成してみれば他の傀儡と同じく喋らず動かない白砂に俺がどれだけ後悔したことか・・・。
それでも白砂の名残だと、大切に大切にしてきたが20年間一度も俺の操り糸なしに動いたためしがない。それが、
震える口唇を動かし、尋ねる
「…っ…ぁ…白砂…?…白砂?もしかして意識があるのか?」
こんなに緊張しているのは屹度白砂がまだ生身で俺のことを覚えていてくれたあの時以来だ。赤砂のサソリらしくない、怖がった様子に状況が呑み込めていないチヨバアたちが唖然としているのが分かるが今はそんなことよりも白砂だ。
返事を待つ、白砂ならいつまでも待てるさ。
すると
「……サソリ…俺・・は・・・生きて……どこ・・か…静かな……ところ…で生きよ……い・・・」
・・・っ!!?
『サソリ、俺は生きていたんだ。だがずっと伝えたくても伝えられなかった。そうだ、どこか静かなところで生きよう。そう、一緒に』
俺には分かる、白砂がそう言っていることが分かる。
ああ、なんて馬鹿だったんだろう。あろうことか昔俺自身がいったじゃないか、一緒に永遠を生きようと、誓ったじゃないか。
そうだ、暁何てやめよう。お前を俺から奪おうとするあんな所には居たくない、お前が言ったように静かなところで今度こそ二人っきりで過ごそう。
取りあえず俺にいるのは白砂だけだ、
ここにヒルコも他の傀儡も置いて行こう。
欲しくなったらまた二人で作ればいい。何時だろう、最後に白砂と一緒に傀儡を作ったのは・・・。
想像すれば楽しみで口角が上がる。
後ろで固まっている小娘たちの御蔭かも知れない。
だからせめてもの礼だ。大蛇丸情報を教えやる。
大蛇丸め、精々お気に入りの餓鬼(サスケ)を必死で守りやがれ。
――その間に俺は白砂と二人だけの生活(エデン)を満喫するさ。
end
***
後書き
はい、こんな落ちです。二人とも傀儡として生きているので忍界大戦で穢土転生はされません。参戦もしない、けどサソリ曰く新婚生活を邪魔したら、どっちの味方でもなく邪魔した奴らに襲い掛かる。
成り主が傀儡=死亡ルートを辿ったので、書けなかったけど一緒に里抜けルートなら最強の保護者として存在してます。今は自分の身体も動かせるようになったので、サソリを守るセコム気分で裏切り者扱いしてくる暁メンバーをちぎっては沈め、ちぎっては埋めるの繰り返しです。そんな成り主にサソリがキュンキュンときめいていればいい。
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