▽ 千手
森の千手一族と愛のうちは一族は相容れない。
かの六道仙人の時代より続く千手一族の因縁の相手――うちは一族。
彼らを時に人はこう呼んでいる。
完全無敵の(愛が重い)うちは(悪に憑りつかれた)一族
一族の大半が非常に整った顔立ちに加え、世界三大瞳術の一つ写輪眼を保持する。彼らは天から二物も三物も与えらえていたが人間性だけは与えられなかった。
それこそ千手一族よりも愛情深く心優しい一族である一方で、愛憎と言う言葉を体現した人間が度々現れる危険な人間の集団だった。一族の誰かが悪堕ちしても皆が口をそろえて「仕方ないよね」と納得する始末。
千手一族に生まれた少年、扉間は母親譲りの白髪に赤い目を持つ彼には兄がいた。
千手柱間。後の初代火影であり、忍びの神と讃えられる人物である。
扉間は固く決意していることがあった。
うちは一族と敵対する千手一族だが、どういうわけか両一族はお互いを強く意識する傾向があった。一人のうちはには一人の千手が永遠のライバルとして生まれてくる。
お互いを真に理解し、また同時に相反するのだと云わんばかりに殺し合ってきた。
拮抗する実力の彼らは一方が死ねば後を追うようにもう一方も自然と命を落とす、呪いのようなそれに掛からない人間はいないとまで云われている。まるで両一族の始祖同士がそうだったように・・・。
扉間の父、そして先日、兄までもがその呪いに掛かった。
醜いと思った。
ただでさえ今の戦国の世の不条理に不満を抱いていた彼にとっては、全体ではなく個人の争いに命を賭けるなど言語道断だ。
恐らく自分にとってのライバルになのだろう。うちはらしく整った顔立ちをしていたイズナという子どもを思い浮かべ、俺は兄者のようにならないぞ!と堅く誓った。
だからこそ初めて好きになった女が自分より8つも年下でイズナに似たうちはの人間だったことに衝撃を受けたのだった。
01話
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