木下闇 | ナノ


▽ カカシはもう泣きそうだ



イタチが渋々施した術で若干回復したカカシは、もう扉間に抱えられての移動ではなく自分の足で歩くことに密かに感動していたが、現状に対する絶望感がそれに優っていた。



「あら、まぁ、まぁ、なんて可愛いお嬢さん!」
「羨ましいわ〜」
「よかったらコレ食べなさい」



差し出される全てを綺麗な笑顔で「ありがとうございます」と受け取っている少女が実はお婆ちゃんなんです、なんて言ったらどういう反応されるだろうか。


猫かぶりモードは崩さないまま上忍でも見切れない速さで腹パン(身長的にそこが一番殴りやすい)され、何言ってるの?と周囲に頭の病院に連行される様子が容易に想像できたから言わないが。



空は青い、だが俺の心は灰色だ。
ふ、と自嘲気味に嗤うカカシは腕の中の見た目は子ども、中身はお婆ちゃんをそれもう掌中の玉のように扱った。




18話







時は少し遡る。
人海戦術、綱手捜索メンバーは二人一組に分かれることにはなったが、問題が発生した。


誰が誰と組むか、それである。


「俺とウキナ、後それ以外で二人一組。以上」


「死ね二代目」


「殺すぞ二代目」


物騒なうちは兄弟がギラギラと写輪眼をちらつかせて来るが今更そんなことで怯える扉間ではない。フンと鼻をならして余計に二人を煽るほどの通常運転っぷりだ。



「じゃあ自来也様とウキナちゃんで「「「ダメだ!!」」」…なんでそこは揃うんだよ」


どちらかと一緒になればもう片方が反対する、うちはの暴走に慣れきっているシスイの提案もシスコンと嫁馬鹿に一蹴される。


「自来也様じゃ心配だ」


「ウキナが危ない」


「のぞき魔は論外だ」



全て道中の自来也の行いからの発言である。落ち込む師を慰めようにもフォローしようにも言葉が出てこない、とナルトはオロオロするしかなかった。


一方でサスケは好きだし、将来義兄妹となりそうな二人、そして生まれも育ちも木の葉隠れの里のサクラにとって火影=偉いが刷り込まれているため必然的に扉間も敬ってしまう。結果、偉いらしいけど火影より凄くないし、サスケ君みたいにかっこよくもない、女癖は最悪とインプットされた彼女の優秀な脳は“助ける”ことを否定するので全く動かない始末。



数時間の言い合いの末、漸く回復しだしたカカシにお鉢が回ってきたのは、三人の妥協案としかいいようがなかった。


カカシの味方はいなかった。






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