▽ うちはの天才
写輪眼や念能力の性能から考えれば医療系も抑えていそうなウキナだが、実は他人を治癒する術を持っていなかった。彼女自身、滅多に怪我を負うこともないし、過去で言えばマダラあたりのために修得してそうなそれは、
「だって兄さんが死なないように念を教えたんですよ?」
と主張している。
つまりマダラも自己治癒能力が異常に高くなっているということである。
あくまで近未来視と疑似白眼の能力を持つ<緋色の眼>は体力がなく、精々10分程度の戦闘しかできない彼女がはやく勝負を付けるために創りだした能力なので医療は目的とされていなかった。もう一つに限っては遠方から敵を丸焼きにするものなので問題外である。
今生のウキナの兄は天才だ。もう一人の兄は秀才で、ウキナ自身は天災だが、長男のイタチは紛れもなくエリート一族の天才である。
イタチに出来ないことは無いとシスイが断言するほど才能にあふれていた。
イタチは戦闘可能時間を除けばウキナと自分はあくまで同等だと認識している。確かにその認識は正しいが、イタチはウキナが大好きである。男とはその大半が愛した女性を守りたいと思うもので、イタチもまた例外ではなかった。
曰く、
「小さくて可愛いのに見慣れているはずの俺でさえ日々その輝かんばかりの美しさに目を奪われてしまうし静謐な雰囲気やそれに似合った凛とした佇まいは完璧その上聡明で賭けているところなど何一つない、年頃の女人として求められる礼節も弁えている非の打ち所のない最愛の妹、それがウキナだがお兄ちゃんはもっと頼って欲しい」
イタチにすれば幸いにもウキナは虚弱体質、その上うちはの血継限界なんて目じゃないくらい稀有の能力を秘めているのだがら狙われやすい。だが守るということは簡単そうで、簡単ではなかった。
人間の悪意から守る手段は旧家の棟梁としてフガクが動いているし、結界忍術を得意とする母にイタチが「代わってください」とお願いしても笑顔で「いやよ」と断れてしまうのは経験済みである。
そこでイタチが目をつけたのは医療忍術だった。
天才はどこまでいっても天才だったらしい。綱手ほどはいかなくともイタチの医療忍術は目を瞠るものだった。
「…だからここはこうやればいいんだ」
「なるほど・・・すごい。流石イタチさん!サスケ君のお兄さんですね!」
「いや、サクラちゃんも覚えが早い。これは俺もうかうかしていられないな」
「そんな!」
にこやかに医療忍術指導を実践で教えるイタチと照れくさそうに顔を綻ばせるサクラ。中忍選抜試験で己の無力さを痛感したサクラに「覚えてみませんか?」と薦めたウキナは満足そうに微笑んだ。
「あ、あのぉ〜……」
――俺を実験体にするの、やめてくれない?
ゲッソリと窶れたカカシが懇願していた。
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