▽ 金に振り回される千手の孫たち
「……まさか」
「まさか、ですね」
伝説の鴨、とまで称されている実年齢からは想像もできない美女・綱手は目の前で輝かしく点滅する777に冷汗が流れた。
「私がこんなに当たるなんて…屹度よからぬことが起きる、絶対だ。絶対」
「二回いいましたね……でもここ三日連続この調子ですし。
綱手様、今までここまで当たりが来たことは?」
「勿論、ない!」
清々しいほど強く言い切った綱手に答えが分かっていたのか、
「ですよね〜」
アハハハと乾いた笑みを浮かべつつ付き人のシズネは腕の力を強めた。それに抱きかかえられていた子豚は「ブウウッ?!」と悲鳴を上げるが今の二人に気づく余裕はない。
「兎に角当たりがでるうちは続けよう」
「…外れてもやめないくせに」
綱手たちが滞在している短冊街に間もなく二組の厄災が訪れるまで、二人と一匹は賭場巡りを繰り返した。
一方、その頃
「無駄遣いしてないといいですけど」
「無理だな。あれは兄者の遺伝だ。悪い方の」
「そうですね、悪い方の」
やれやれとそろって溜息をはくウキナ達は脳裏で財布を空にして帰ってきた柱間を絞めるミトの姿を思い浮かべた。そして懲りずにまた繰り返す。寧ろ賭けに勝って帰ってきたことの方が思い出せないという、どちらかといえば強運の持ち主(ただし賭け事に興味なし)の二人にしてみれば理解できない悪癖だった。
綱手と面識がない世代は首を傾げるが、唯一幼いころから彼女を知っている元班員がそれに同意する。といっても、彼自身女癖の悪さがあるためあまり綱手一人を責めることはできないが。
道中で自来也の悪癖も知った扉間が内心で「弟子の一人どころか三人もまともに育てられなかったのか。帰ったら説教だな」とか考えていたりする。逃げろヒルゼン。
「まあいざとなったら綱手ちゃんの借金を全額肩代わりして強制的に火影に就任させましょう」
「よし採用」
貯金どころかポケットマネー(正確には時空間忍術の応用で作った四次元ポケットに入れているお金)で国家財産並に持つ二人だから払えないことは無い。
物欲もなくウキナに限っては大半が兄からの貢物という非常に夫婦のお財布に優しい入手方法だし、住まいはカカシ宅やうちはの実家のため家賃も無し、精々食費くらいだ。
因みにカカシは知らないが、いつ何があってもいいように紙幣ではなく砂金やら金棒やらがずっしりと彼の寝室のベッドの下に隠されている。
まあカカシ自身里一番の稼ぎ頭で祖父母同様物欲がないのでたんまりと貯金があるのだが。
その総額を知ればさすがに仰天するだろう。
そのうちカカシ宅は金でできるかもしれない。
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