▽ 兄と孫
事件には不幸が重なって成立するものがある。
例えばカカシ達は待機所の天井でいつも一人二人暗部がいることを知っているが、その日の当番がイタチだったことは知るわけがない。ついでにいつもならストッパーになるシスイもいなかった。
イタチは妹が大好きだ。寧ろ愛してる。兄としてではなく男としてウキナという人間に恋していた。
兄妹なのだし、タブーと謂われようがウキナを想う心は消せなかった。
そのウキナは何だかんだで扉間が好きだ。勿論イタチやサスケ、前世の兄にあたるマダラたちも好きだし、大切にしている。特にマダラと決別してからはイタチたちに愛情が注がれていた。それでも同族で兄弟という点を除けばその想いは扉間よりも下だということをイタチは知っている。
知っているがだからと言って素直にウキナを扉間に渡そうとは思わない。事ある毎に邪魔してやると有言実行するのがうちはイタチだ。
イタチは扉間だけでなく、カカシもまた気に食わなかった。可愛いウキナと血が繋がっていることは自分と扉間の違いであったし、扉間よりも大事にされる要因だったがカカシにもそれがある。
しかも祖母というのは基本的に孫に甘い。イタチの今は亡き祖母もそうだった。
普通の家庭でも甘いのにましてやこちらは身内大好きうちは一族。蜂蜜に砂糖を足すレベルの甘さになり兼ねない。
イタチはカカシが愚痴るのはどうでもいい。扉間に関してならもっとどうでもいい。だがウキナに関してはダメだ、聞きたくなくとも聞いてしまう。現実を突きつけられてしまう。
カカシ君?俺はいつだって『イタチ兄さん』だ。偶には『お兄ちゃん』とかあるいは『イタチ』って呼ばれたかった。
よく食事を作りに来てくれた?ああ、そうだ。自分で歩けないウキナを俺が貴方の家まで連れて来たのだからよく知ってるさ。その時俺がどんな気持ちだったか考えた事ありますか?
朝から押し倒される?弄られる?なにそれ羨ましい。
うちはイタチ(18)、妹愛が重すぎて危ない扉をすでにいくつも開いていた。
引き金は最後のそれだった。
「ほんとだーよ」
「あ、今声に出してたか?」
「出してないけど考えてることは解る」
「流石孫」
「だからやめてってば」
「そんなに嫌なら俺がどうにかしてあげますよ、但し命の保証はできませんが」
「「え?」」
カカシを月読で72時間苦しめたことに後悔はない。
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