木下闇 | ナノ


▽ 0、そして、

「酒!飲まずにはいられないッ!!」
「……イタチ、もうそれくらいにしておけよ」


 それにお前は未成年だろうが…と呆れた視線を向けるシスイに、一気飲みしていた一升瓶をテーブルに叩きつける勢いで置いた。その衝撃音に素面の店員がビクリと身体を震わせるが、酒が入ったイタチは不愉快そうに鼻で哂うと苦々しいといった様子で口を開いた。


「…13の時、カカシさんに居酒屋に連れていかれたが店員に酒の注文を聞かれた」
「……」


 イタチが老け顔なのを気にしていたな、悪いことを思い出させてしまった、とシスイはすまなそうな顔をしてしまう。

イタチは通りかかった店員に「ダースで持ってこい!」と注文している。上座の方ではフガクさんがすっかり出来上がっていたが止める者はいない。


まるで阿鼻叫喚だ。

イタチのように荒れるもの、フガクのように潰れるまで酒を飲む者、シスイのように身内を介抱するものはほんの片手で数えられる程度しかいない。

それもこれも大蛇丸のせいで二代目火影が復活したせいである。前世では夫婦だったとはいえ、今はまだ10歳の娘が結婚?再婚?した衝撃は中々消えない。幸いなのは実家から嫁に出るのではないということである。

カカシの家に扉間と一緒に暮らすか、という提案に過呼吸を起こしていたイタチを見て「止めておきます。兄さんが結婚するまでは実家から通うことにしますよ」と答えていた。
恐らくイタチが結婚することはない。

それでも少し話があるとかで残ったウキナにひょっとして気が変わったんじゃないか、と仕事も手がつかない。

情緒不安定な一族の不安が爆発した後は集落から飛び出した。見張りでついてきた奈良や山中一族たちの静止の声も振り切ってエスケープした。今後についての会議すらボイコットである。団結した一族の恐ろしさをその場にいたものは知った。

 日も暮れて間もない時分に滅多に店に来ない一族が揃いも揃って仏頂面をぶら下げて来店したのに、笑顔で対応できた店員は誇っていいだろう。

当初お通夜のように静かに酒をちびりちびりと飲む男達だったが、密かに娘に「お父さんと結婚するー」などと父親として一度は謂われたい科白を聞く前に碌でもない男に嫁に出す羽目になったフガクが、「俺はまじめキャラをやめるぞーーー!!」などと叫びながら普段は飲まない度数が高い酒を一気飲みしてから他も続くように壊れた。

フガクは早々に潰れたにも関わらずこの場にいる誰よりも酒を摂取したはずのイタチはまだまだ余裕そうだ。酒に関しては母親に似たのだろう。

フガクの隣でイタチと同じように叫びながら酒を飲みほしているのがあの温和で美人なミコトとは思えない。そうだ忘れてはいけない、今でこそ大人しくて優しいお母さんだが、ミコトはあの『赤い血潮のハバネロ』と恐れられたうずまきクシナの親友だったということを!彼女の爆発力は流石うちは!

脳内の何かがプツンと切れれば、うちはは何時だってとんでもないことを仕出かすため警戒は解かれない。



イタチが本日何度目かの「飲まずにはいられないッ!」をするの見て、うちはシスイは考えるのをやめた。そして同時に親友もやめようかどうしようか真剣に悩みだした。






prev / next

[ back to top ]


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -