▽ 後、1
任務を終えて戻ってきたフガクが呼び出されて知らされた事実――恐らくうちは一族の今年一番の事件となるだろう。忍びが悪行に奔らないよう監視するはずの警務部隊が、逆に犯罪に手を染めようとするくらいな大事件発生だ。
一族総出でその場で阿鼻叫喚状態に陥ってしまったため、彼らが何かしでかさないように他の旧家も集められた会議室の、その上座に座るのは、里一番の権力者たる『火影』ではない。
厳密には今の最高権力者の『三代目火影』ではない。
そう、そこに堂々とふんぞり返る男は
「お前がうちはフガクか」
二代目火影 千手扉間、その人である
そして扉間ががっちりとホールドして離さない人物こそ、現在うちは一族が瞳孔を開いてまでガン見しているうちはウキナだ。彼女の兄など文字通り血の涙も流している。
進行役は本来上座に座る筈の人間である三代目だ。関わりたくないと思いつつ、師弟とは死別しても切ることの出来ない縁らしい。扉間が生きた年数を越えても、彼は扉間の中であくまで弟子の「サル」でしかないのだ。
「…一部のものは知っての通り、ウキナ様はあの二代目様の奥方だ」
ざわめきはあったが、今は簡易に事情を話した。
あの後生前扉間がウキナにしたように、穢土転生体を生者へと戻す<穢土転生>の裏ワザで現世に残った扉間は、生きるも死ぬもウキナと共に、を再び実現できたことにご満悦だ。
前世ではそれが原因でマダラの怒りを買い、ウキナもマダラと決別したのだから現世にマダラが甦ろうものならば、前回よりも恐ろしい反応を示すことだろう。現にウキナ自身から説明されたとはいえ、うちは一族の目がヤバい。
「これからどうするか……」
勿論、扉間の住む場所である。
穢土転生だけでも危険なのにその裏ワザの正体まで知られれば他国からも狙われる。それは術者のウキナにもいえることで、隠す必要があった。
「一緒にうちで暮らしますか?」
ウキナの提案はイコール扉間がうちはの居住区に暮らす、ということである。
うちは一族には悪夢だ。
身内大好き、ウキナ愛してるのうちは一族にとって彼女を独り占めしそうな輩を入れたくはない。
硬直するうちは勢に一つ溜息を洩らす三代目はその視線をある男で止めた。始終険しい顔をしていたイタチでもそれを抑え付けているシスイでもない。我関せずを貫き空気になろうと尽力しているカカシだ。
そうだ、カカシだ。
「カカシよ、後は頼んだ」
「ちょっ、三代目?!」
まさかの展開に困惑するカカシに「アイツは誰だ?」と扉間の純粋な疑問がウキナに向けられた。他の人間ならカカシの気持ちを汲んで濁してくれたかもしれない、だがウキナは孫が好きだ。同時に反応が面白いとか言って弄るのがもっと大好きだった。
「はたけカカシ君。菫の息子、つまり私たちの孫ですよ」
この世界は俺に優しくない。後にはたけカカシはそう語ったという。
カカシ、祖父(扉間)と暮らす。
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