木下闇 | ナノ


▽ 後、2


不気味に笑いだしたイタチがまき散らした公害、もとい須佐能乎の一振りで逃亡していた大蛇丸にまで被害が届き、突然の猛威に自分の両腕も切断された。音忍によって救助され、命からがら里外まで脱出したが、皆は大蛇丸のことを追うことも忘れていた。

それというのもイタチVS扉間の仁義なき戦いの火蓋が切って落とされたからである。




昔、昔、あの六道仙人の時代に関して奇妙な噂があった。


六道仙人の息子たちが跡目争いをしたことは有名だが、そのきっかけは一人の女だったという噂が。それも恋人でも妻でもなく、血を分けた実の妹だったという。妹がこの世から消えてからは敗者となった兄はそれ以来愛を捨て、力だけを求めその後も戦い続けたそうだ。

勝者となった弟は人々の協力を得て、誰かを愛することを忘れなかったという。


その兄の子孫と弟の子孫は長い年月を経てもなお、敵対するのだった。



ウキナは今現在、窮地に立たされてい前門の虎、後門の狼。鎮静したうちはイタチと千手扉間に挟まれ両腕を掴まれた。
鶴の一声ならぬ妹/嫁の一声は二人を止めるのに有効的だった。

 だがしかし、すぐさま距離を取ってそれぞれウキナを連れ去ろうと二人は全く違うようで同じことを考えていたのか、タイミングが見事に重なってウキナは左右から腕を掴まれる形になる。突然のことに回避出来ず「うっ!」と呻いたので双方は同時に顔を見合わせた。
重なった視線で繰り返される無言の攻防が開始された。


「(離せ)」

「(お前がな)」

流石に弟を咎めようとする柱間の声すら聞き入れる様子もない。大蛇丸に置いて行かれ、周囲に放置されていた忍の神に対して、扉間は視線を外さず「嫌だ」ときっぱり言い切った。

扉間の返答も予想していた柱間が言い聞かせるようにつづけたが…

「だがな、いくらウキナの夫でも今は違うのだから『黙れ』・・・」


一蹴された。
ズゥ〜ン!と重い空気を纏う柱間を一瞥したかと思えば、凍り付くような殺気の籠った眼でイタチを睨みつける扉間は流石二代目火影といえるほど圧倒的な威圧感を放っている。

だがそれに引くような繊細な人間じゃないと、万華鏡写輪眼で負けずと彼のガン垂れ攻撃に応戦するイタチに怖いものなど妹に嫌われることしかないだろう。


カカシ達のようにポカーンとこちらを静観していた一族の人間も我らの姫様をお助けしなければと我に返り、急いでイタチの背後から写輪眼の集中威嚇攻撃を開始する。並の忍びなら足が竦むような光景だ。もし一対一なら逃げろとまで恐れられているうちはの忍びを数十人対一人で相手をしているのだから・・・しかし


「(フン、これしきの殺気)」

 嘗てマダラを始め、この何倍もの大人数にもされた行為に恐れる二代目火影様ではない。寧ろマダラとイズナによる暗殺一歩手前の嫌がらせの数々に耐えきった彼の強靭な精神はこれしきで傷つきはしなかった。

「フッ、莫迦が!」と鼻で哂って、ウキナが痛がった際思わず手の力を緩めたイタチの隙を突いた。背中から腕を廻し、檻の中に拘束するように小さな体を抱き上げ、そのままやっと再び腕に抱けた最愛の妻(見た目幼女)に頬を寄せる。

どことなく犯罪の薫りが漂う光景だが、つい先ほどまでここが戦場の一端だったことなど忘れさせるような穏やかな表情を浮かべる扉間を、彼を知らない人間は唖然とした気持ちで見上げた。


結果的に妹を奪われたイタチは憎々しげに扉間を見つめる。しかし見たこともない表情を浮かべる妹に更に苦虫を数十匹は潰したような顔をする。癪だが、認めなくてはいけないのだろう。


「(ウキナ・・・・)」

……しかし過剰なスキンシップを取る扉間にすぐさま険悪なものに変えたのであった。





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