木下闇 | ナノ


▽ 後、3


二人が満足した頃、ふと本戦会場の方に向けて能力を発動させたウキナが「あ、」と声を洩らした。

「どうした?」

「いえ、ただヒルゼン君がピンチのようです」

のほほんと世間話しでもする気軽さで告げられた内容に反応したのは周囲の木の葉の忍びだった。

「「「「「「何暢気に云ってるんですかアアアアア!!!」」」」」」








大蛇丸最大の不幸とは何だろうか。
自分の支配を退けた扉間が嫁馬鹿だったこと?
欲しかったその少女が彼の手には負えなかったこと?
シスコン拗らせたイタチが八つ当たりしてきたこと?

全部である。


あれだけ三代目が苦戦していた大蛇丸をあっさり退けた三人に畏怖と敬意を籠めた眼差しが向けられる中、再会した二代目夫婦はどうでもいいと総無視して先ほどのことを謝罪していた。

地形が変形したのは大蛇丸の大蛇のせいだと平然と告げたウキナに真実を知る面々は顔をひきつらせたが。勿論その横で「俺の妹の言うことは?」と写輪眼をグルグル回しながら目で語るイタチに「ゼッターイ」と返すしかない。

カカシはサスケがナルトに「うちはの法はウキナだ」と言っていたのを思い出した。



ウキナは俺には謝罪はないのかと後ろから抱き付いてくる扉間にニコリと笑いかけた。それに頬を染める人間と青ざめる人間、後者に含まれるカカシは全力でこの場から逃げ出したいと思ったが、優秀な彼の耳にはその可憐な唇で吐き出される物騒な内容を拾ってしまう。


「<穢土転生>ってほんとに何度殺しても死なないのか試してみたかったんです。亡者にそれをしたら死者を冒涜したとかで問題ですし……身内なら問題ないかと思って、つい」

ショボーンと頼りなさげに眉を顰めるる姿は天使のように可愛いが、見た目と科白が一致しない。三代目は顔を引き攣らせ、恐る恐る扉間を窺う様に視線を向けた。


「なら仕方がないな」
「いいんかいッ!!」


あっさり扉間は納得した。流石研究好きの似たモノ夫婦め!!懐かしいような悲しいような複雑な感情に悟るように、さよなら前の儂、そしてお帰りなさい昔の悪夢、と遠い目で虚空を見つめる。



 年寄りだとかは言い訳にならないことは、ここ数年ウキナがうちはのクーデターを阻止してから振り回される日々で悟っている。単純に苦労が二倍になるだけだ、それも元上司で師匠だからこそ不平不満が云えないというおまけつきで。やだ泣きそう。

歳をとった分涙線も緩んでいるらしい。三代目の頬を一粒の真珠が零れ落ちたが誰も気にしなかった。


「(いっそのこと火影引退しようかの。この夫婦に振り回されるであろうこれからの未来を思えば、綱手か自来也にでも押し付けよう。ダンゾウや相談役の三人にも任せて儂はぶらりと温泉旅行にでも行こうかの。)」


 三代目は既に現実逃避を始めた。だが三代目がそうしたくなるのも解る。



ヤレヤレとさっさと退散しようとした三代目は忘れていた……その『イタチ』はとんでもなくシスコンだということを。ウキナが生まれた歳にアカデミーを卒業した優等生が

「ウキナが風邪を引いたから看病したい。任務はシスイに」とかいってSランク任務を親友に押し付けたり

「禁断症状だ」とかいって暗部の長期任務にウキナの私物やら写真やらをブツブツ呟きながらガン見する(素性がばれないようにつけた面も意味がない)。



「ウキナは誰にも嫁にやらん!元旦那とかナンセンスナンセンスナンセンスナンセンスナンセンスナンセンスナンセンスナンセンスナンセンスナンセンスナンセンスナンセンスッッ!!」


……ヤバい病気が再発した。





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