▽ 後、6
昔、ある男がいた。
歴史に名を残すほど偉大な男だったが、冷徹非道で卑劣な人間だと記されるだけで知られていないことも多い。
例えば大の愛妻家だとか。
嫁が好き過ぎて暴走しがちだとか。
真面目堅物な顔をして実は天然だとか。
嫁曰く発情した猫みたいな男だとか。
大半が嫁に関することだがそれだけ男はある女が好きだった。それが周りを振り回しトラウマを刻むほど重い愛情だったともいえる。
男は死んだ。女も死んだ。
女は生前二人が予想したように同じ世界に生まれ変わった。
男は…、
カタカタカタカタカタカタッ!!!
「大蛇丸様あの棺めっちゃ揺れてます」
「そうね。でもホラーハウスみたいで面白いじゃない」
「元々大蛇丸様がいる時点でホラー要素たっぷりです」
「殺すわよ、カブト」
「すみません。でもほんとどうにかしてください」
「無理よ」
大蛇丸は今度の木の葉崩しに使おうと思って復活させた男(のいる棺)に近づいた。
「ちょっと暫く静かにしてくださいよ二代目さま」
「(カタカタカタカタ)」
可笑しい。術者である大蛇丸がどれだけ縛りを強めても大人しくならないのだ。何がそれだけ男に力を与えるのか。男の妻が与えたという摩訶不思議な力なのだろうか。
創設期にうちは一族と一部の人間に齎されたというチャクラとは似て異なる力。どれだけ文献を漁ってもたどり着くことはできなかった。今も昔もそれを解明し扱えるのはうちはのお姫様…いや、女帝様だけだ。
欲しい、知りたい。ペロリと舌なめずりする大蛇丸は今度の木の葉崩しで是非とも欲しいと切望する。男の妻が生まれ変わった少女が手に入れば、また一つ己の欲求を満たせるだろう。
だがあの子の護衛は強い、それも大蛇丸よりも。
天才・うちはイタチ
秀才・うちはサスケ
イタチには一度敗北している。命からがら逃げだせたが次はないだろう。
サスケとはこの間第二次試験で対峙したが、妹の名前を出せば恐ろしいほど豹変した。怯え生まれたての小鹿のように震える両足で立ちあがるのがやっと、という様子からバーサーカーモードで襲い掛かってきた。あれはヤバい、遊び過ぎた。子どもでもうちは(究極の身内大好き人間)というべきか。
だからといって諦めるわけもない。そのためにも
「本気であの子をうちはから奪い取れるのは貴方だけ。ふふふ、嘗てあのマダラを出し抜いて結婚した貴方だからこそ今度も期待していますよ?」
prev /
next