▽ 後、7
「いいかウキナ、お前はこの中いるんだぞ」
「はい」
「ああ、でも心配だ。本当に駄目だからな」
「ふふふ」
「あ、可愛い…じゃなくて、外は危ない、中は安全、俺の隣にずっといなさい」
「兄さんは本当に心配性ですね。大丈夫、兄さんから離れませんよ」
「ウキナ」
「兄さん」
「ウキナ」
「兄さん」
「そこのアホ兄妹いいからまじめに働けええええええええええ!!!」
須佐能乎の中でイチャつくうちは兄妹に耐え切れず、きれた自来也の叫び声が響き渡った。
「(本当に兄妹かこいつら)」
そう自来也が疑ってしまうのも無理はない。里の上層部はいつも「だってうちはだもん」で納得していたが、マダラとウキナのやり取りを知らない世代にはあまり効果はなかった。
「嫉妬ですか?恋人いませんしね自来也さま」
「初恋をずっと引きずってますものね。拗らせればあなたも私たち(うちは)と同類といえたんですが、」
実に残念そうな眼を向けられても困るしかない。初恋拗らせたうちはとかいるのか、と首を傾げたが「いますよ」と返された。おい今声に出してなかったぞ。
「顔に出てました」
またしても。ワシほんとコイツ苦手だ。
ウキナに関してだけはダンゾウと同意見を抱いているとは自来也も知るまい。
現在大蛇丸による木の葉崩し実行中、三代目が高齢にも関わらず大蛇丸と死闘を繰り広げているのが本戦試験会場。イタチはそこからかなり離れた中心街までウキナを連れて逃走した。曰く、
『里は大事だ…が、俺にとってウキナの方が無くてはならない』
あそこに置いておいたらとんでもないことになりそうだったから、と悪びれもせず告げた。
義兄や元夫の無様な姿を揶揄してやろうと楽しみにうちは煎餅を持参していたが能力で確認したところまだ来ていないし、時間はあるだろうと大人しくイタチの腕の中に納まっていた。ウキナは自分に頬擦りしながらも須佐能乎の一振りで何十人もの敵を葬り去っているイタチに「この人ほんとチートですね」と呆れつつ甘受した。
あの男が現れるまで、大人しくしていた。
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