▽ 後、8
うちはイタチ視点
サスケの試合が始まった。
中々善戦しているようだ。
たった一か月でよくあそこまで成長したものだと感心する。
しかし気になるのは相手の子・・・・
印を組まずに攻防を繰り広げるあの砂の動きは気になる。カカシさんに話は聞いていたが・・・すると遠方に観客席に到着したカカシさんと目が合った。一礼しておいたがこちらには来ないでほしい。
さりげなくウキナの視界に入らないようにする。あの人を何かと気に掛けるウキナは流石俺の妹と誇らしいが、そんなウキナに(一方的に)可愛がられるカカシさんが憎い。
事情は知らなくともあの人は色んな意味で教育に悪いからな。ここらへんに固まっている他のうちはの者も同じように写輪眼で威嚇していた。
「(来ないでください)」
「(……)」
……よし、来ないな。
肩を竦めたカカシさんを認めてほっと一息つく。
カカシさんは前のウキナの孫に当たる。四分の一はうちはの血が入っている御蔭で写輪眼もあそこまで使いこなせているが、チャクラ消費が激しいのは繊細なウキナの遺伝子よりも二代目が勝ったんだろう。
因みに一族内の二代目の評判は頗る悪い。何でも長いことウキナへの態度が悪かったとか、マダラがついでに殺しておいてくれなかった等恨み言がびっしり書かれた記録まで残っている。まあ俺もウキナが実際そんな目にあっていたなら躊躇なく里抜けなり暗殺なりするだろうが。
さて、隣に座るウキナの視界には移らないように隠しながらの牽制だったが、当のウキナは気づかずにサスケを見ていた。少しムッとする。
ウキナ、そんなにお兄ちゃんは存在感がないか?
サスケの試合に乱戦して「イタチお兄ちゃんカッコイイ!」と言ってもらいたい衝動が襲う。どうしよう、今すぐ乱入してサスケの邪魔をしたくてしょうがない。シスイ、大丈夫だからその手を離せ。弟の見せ場を奪うわけが……時と場合と俺のウキナ不足加減によるがないさ。
よくそんなことをしているから最近サスケからの視線が冷たいのかもしれない。だが許せ、お兄ちゃんはサスケも大事だがウキナのほうが何倍も大切なんだ。
今だって、いつ何時、何が起こるか分からないために膝にのせたいのを我慢しているんだ。
お兄ちゃんはウキナ不足で死にそうだと溜息をついたら隣に座っているシスイに呆れた視線を向けられた。何が言いたい。
傍目からもイタチの落ち込み具合は明白だったが、うっぷん晴らしと謂わんばかりに呼びに来た暗部の部下が悉くウキナの見ていないところで排除されるのを、シスイは何とも言えない表情で見送った。さわらぬシスコンに祟りなしだ。
イタチがふぅと溜息を衝けば瞬間、嫌な予感が奔る。
空を見上げれば晴れ渡る様な大空から降ってくる天使の羽のようで幻想的な光景が視界に映ったが、それどころじゃない。
イタチは考えた。
これは大蛇丸の仕業だと。
イタチは本能的に動いた。
ここにウキナを置いていたら後で後悔すると。
「シスイ……後は任せた」
「は?ちょ、え、おい!!」
目の前の敵に集中していたシスイは背後にいた友の疾走に気づくのが遅れた。
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