木下闇 | ナノ


▽ 壁は高く、溝は深い


「何処へ行っていた」

高圧的に訊ねてくる男……その男の足の間に座らされ後ろからがっしりホールドされているウキナはマダラで慣れたはずの体勢にも関わらず居心地悪そうに身じろいていた。

夫をちらりと一瞥してから「弟子の修行を見に」と問いかけに対して簡潔に答える。


ほぉ、様々な感情が籠められた聲を洩らしつつ扉間はさりげなくウキナに変化がないか確認しホッと安堵した。やはり腕の拘束は外れない。

ウキナも僅かに鬱陶しいそうな空気を醸し出すが、それを隠すように「そういえば」と口を開いた。


「侍女から私を探していたと聞きました。何か御用がおありで?」
「いや、用はない」

……。
美しい微笑みが硬直する。ピシリと音を立てて凍り付いたそれに追い打ちをかけるように扉間は言った。


「お前は大人しく家にいろ」

コイツ!
舌打ちでもかましそうな苛立ちにウキナは内心で罵った。

対して扉間の方はというと、

「どこにいっていた」(訳:ちょっと目を離した隙に消えていたから心配したぞ)
「いや、用はない」(訳:顔が見たかっただけだ)
「お前は大人しく家に入ろ」(訳:そして俺の帰りを待っていてほしい)

という隠された本音の通り内心は安堵と弟子に対する嫉妬心、そして男心によって複雑怪奇に乱れていた。本来ならそれに気づけただろうが、生憎結婚してから続くこの拘束にいい加減ストレスが溜まっていたウキナは気づこうとも思わなかった。


非常に分かりにくいことに表の顔にはそんな感情が一切見えない。片や完璧な微笑み、片や常時不機嫌そうな仏頂面。夫婦なのに会話は嫌味が飛び交ったり、稀に話が弾んでいるかと思えば最近考案しているらしい忍者養成所に関することか、禁術に関する意見交換。柱間とミトも決して恋愛結婚とは言い難いが、それでも仲睦まじい兄夫婦と比べて未来が絶望的なレベルの枯れ果てた夫婦だ。

これでもまだ新婚といえる、はず…。


それでも夜になると活き活きとウキナと寝室に篭る扉間は一部でムッツリと噂されるのであった。


11話




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