木下闇 | ナノ


▽ 準備には写輪眼がいる


あ、やっぱり。


マダラが人を何人か殺ってきましたと謂わんばかりの兇悪面を引っ提げて柱間たちの前に姿を現したのは、約束の時間の丁度10分前だった。


案外律儀な彼は時間に正確でそれ以上遅すぎることも早すぎることもない。寧ろ待たせることが多い柱間は扉間に指摘されて慌てて行動する。

 今日の集まりは里の情勢でも火の国大名からの依頼でもない。ある意味里にとって一族にとって重要な案件だが、マダラの愛して止まないウキナと腸を引きずり出して中身を猛獣の餌にし、残った遺体を焼き捨て灰となった残骸を溝池にでも捨ててやるくらいの恨みつらみがある扉間の結婚式に関してだ。


不機嫌ですと全身で訴えるマダラに「来たか来たか!」と嬉しそうに座れと対面を示す柱間は流石忍びの神と謳われるだけある。人外の鬼と化したマダラに対抗できるのは相反する存在だけである。



「これだ。折角の晴れ舞台だ、盛大にやらなくてはのぉ!」

此の儘じゃ結婚できないと思っていた弟の嫁が柱間のように好きな女ということで、嬉しくて仕方がないと大はしゃぎの柱間は正しく兄の顔をしていた。


「フン!何が晴れ舞台だ。お前たちのせいでうちはは連日通夜と変わらん。昨日なんぞ隣の家の婆がとうとう倒れた。そのうち死人が出るぞ」

マダラは吐き捨てるかのように一族の惨事を口にする。

一部の人間は政略的に必要なことと解っていても、政治的なことに疎い女、子どもは涙が枯れ尽きるまで嘆き悲しんだ。普段は怖がって近寄ってこない人間が揃って「何故ウキナさまが千手なんぞに嫁がなくてはいけないのですか!私が代わります!どうか、どうか・・・」と訴える始末だった。

一番驚いたのはウキナの乳母にあたるシラギが発狂したかと思えば、「おのれ憎っき千手の小童めがッ!!」と薙刀片手に全身起爆札を貼らせた白装束で集落から飛び出そうとしたことである。
人間自分より壊れた人間を見ると返って冷静になるというもの。唖然としていたものたちもそんなことすれば折角の同盟も破棄になりかねない!と、男五人がかりで止めることになったのはつい最近だ。


 流石に嗤えなかったのか、柱間も口を閉ざした。ちょうど花嫁衣裳の草案を携えて入室したミトが女神のように思えたのは彼の私情も入っているだろう。


「どうしたのアナタ?まさか……マダラ、まだ反対しているの?いい年して恥ずかしい奴ね。だからあんたは結婚できないのよいい加減その異常な盲執じみたシスコン治しなさいよ」

元気だけが取り柄な夫が沈んだ様子を見とめて元凶たる天敵を睨みつける。彼女も一族特有の美しい赤毛を団子にして纏め上げ、千手の長の正妻として着飾った姿は滅多にお目に掛かれないほど美しい。
だがその華の顔瞬時に鬼面へと変え、睨みつける様は恐ろしかった。

夫たる柱間さえ冷汗が流れたのに対してマダラは一斉を意に介さなかった。

フン、余計なお世話だと鼻で哂った。


「ウキナ以上の女がいるはずがないだろう?俺たち兄弟の理想が高いのは一族の皆が知っている。次の長候補の問題は解決済だ。それより早く見せろ、俺のウキナの身に纏うものは全て俺が選ぶ」


さも当然と自身の異常性を肯定するマダラに何とも言えない気持ちになる一同である。
ミトの手から書類を分捕って彼是支持を出すマダラは不満は残っているが、他でもなくウキナが納得しているならと反対する気は失せたようだった。

それに安堵する柱間たち。ミトもこれはどうだと勧めるがマダラに却下されて額に青筋を浮かべる。

一言二言多いマダラにいつ彼女の堪忍袋が切れるかは時間の問題だった。


08話




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