木下闇 | ナノ


▽ 愛じゃない、気まぐれだ

21話



千手扉間のストーカー行為(本人否定中)は一年以上も続いた。

とっくの昔に里も出来上がり、木の葉隠れの里二大火影としてマダラ、柱間が就任した後も続いた。火影の懐刀として名高く本来なら対立するはずの立場の二人の関係にいつしか周囲が生暖かい目でみるようになっても、発展することはなかった。


だからこそ気を抜いたのかもしれない。


身体が動かない。
上から抑え付けられているからだ。暗闇を照らす囲炉裏の炎がパチリと爆ぜる音が聞こえる。
眠っていた自分の上に馬乗りになった扉間の息遣いに混じって。


「(まずい、ですね)」


胸の内でそう呟いても状況が変わるとはいえない。寧ろ今起きれば悪化しそうだと思った。


時は今朝にまで遡る。里を動けない火影の代わりに扉間とウキナが里を出奔した。生まれつき持ち合わせた莫大なチャクラで蝕まれた身体のウキナは本来遠出が禁じられているが、今回は彼女の判断が必要だった。状況を直接見るべく、護衛も兼ねて何かあった時にすぐに戻ってくる手段を持ち合わせた扉間が推薦されたのは当然だが、同時にそれに反対するマダラもいる。

阿吽の門の前まで火影に見送られた二人でも文字通り血の涙をながすマダラを見て引いていた。『なにかあったら殺す』と脅されても無視を決め込んだ扉間は今にもスキップしそうな足取りでウキナと共に里を後にしたのだった。


一夜を過ごす宿で一部屋しか取れなかった時に反対すべきだったのか。
いくら何でも13歳になったばかりの小娘に手を出すほど落ちぶれていないだろうと軽く見ていたウキナは、好奇心から夜の帳が下りた頃に覆いかぶさる影の好きにさせた。


されるがままになっていると何度も口を重ねられた。いつのまにか唇を割って入ってきた扉間の舌を受け入れていると生々しい水音が響く。
扉間の舌が歯をなぞり、歯茎を刺激したかと思えば舌に絡みつく。しつこいほど繰り返される動作に自然と唾液が口端から零れるが、それを当たり前のように舐めとる扉間はもうウキナに夢中だった。

いつまでも続きそうなキスとは別に着物の中に伸ばされたごつい手の感触にビクッと身動く。

その反応に起きたのかと、口を離すが銀糸で繋がっていたのを舐めとる扉間は暫く様子見する。やっと軽くなったとばかりにゆっくり瞼を開いたウキナの視線と扉間のそれが交差した。


硬直した男を見たウキナが

「どうしました、もう終わりですか?」

と挑発するように微笑む。ついで狂ったようにウキナの唇に貪り付く扉間はやっぱり諦められないなぁと思った。



***


「お前は普通じゃない」
「ええ、普通じゃありません」


気怠い身体を起こすのが億劫だと寝転がっていると無理矢理抱き起され、扉間の膝の間に座らされる。後ろから支えるように抱きしめる体温が熱く、それでいて不快とは思わなかった。

背中に全体重を預けても大丈夫そうな体躯に内心で関心していると首筋に吸い付いてきた。銀とも白ともいえる髪があたってこそ痒い。

肌を滑りはじめた手のひらの感触を身体が敏感に覚えている内に再開された行為に、流石のウキナも眉を寄せる。

「…なんだ」

「『なんだ』じゃありません。やめてください」

「……さっきもしたじゃないか」

「さっきはさっきです。一回で満足できませんか?」

揶揄混じりの質問に扉間が口端を上げた。
意外な様にキョトンと目を見開くウキナは再び押し倒される前に告げられた一言に唖然とする。


「足りない」と。





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