▽ 珍妙な千手
あれから暫くして、彼の奇妙な行動は目立った。
「恋する女はいくつになっても綺麗ですが……女に溺れる男の姿は見れたものではありませんね」
「先生現実逃避しないでください!!」
二つ三つしか歳が変わらない弟子に肩を揺さぶられながらも、ウキナは本日送られた花束をどうしようかと珍しく困惑気味に見つめた。
19話
後の“木の葉隠れの里”を創設するための準備は順調だといえた。里の代表を決める際に少々問題が起きたがそれももう解決済みである。
うちは一族は周囲から戦闘狂の一族だと誤解されがちだが、里設立時に必要な役職を熟せるほど頭も切れた。劣勢な状況で結んだ同盟ではないため、里の上役に能力のあるうちはが採用されたことに反対できる正当な理由を持ち合わせる人間がいなかったのも大きい。
勿論同盟に参加した他一族もそれなりの役職についたが、能力的にうちはと千手がその大半を占めたのは仕方ないだろう。その総まとめ役に両一族から一名ずつ選出されることになったのだが、
「先生は当然ですが千手からあの扉間殿が選ばれるなんて…」
眉を寄せながらカガミはそのことを口にする。
まだ扉間とまともに話したことがないカガミは扉間という男が自身の尊敬する師と同等と評価されていることが不満なのだろう。子どもっぽく不満を顔に出している姿にウキナはクスリと笑った。
「私にすれば彼以外にこの地位につくものはいないと思います。物事の捉え方、結論の出し方、人の使い方、先の見据え方…千手の中で最も私に近いのは彼だけですよ」
そう断言するウキナを見て人知れずカガミは扉間に嫉妬した。<念>を教えられているのはマダラたちも同じだが、師弟なんだと断言できるのは自分だけだと誇っていた分、赤の他人で一番近いのが扉間だと本人に云われれば悔しさで胸が締められた。
だけど、
「ストーカーしていてもですか?」
「……」
流石にそれに関しては何も言えないウキナだった。
部屋の隅にはここ毎日送られる花束の山が出来上がっていた。
仕事の話しと称して事ある毎に付きまとう扉間のこと、それともその扉間を抹殺せんと企む実兄たちを止めること、どちらも最小限の被害で治めるとなると里の設立やうちはに優位な状況作りよりも骨が折れるだろう。今のウキナの悩みは尽きない。
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