木下闇 | ナノ


▽ 予想外


17話



『放置しておいても問題ないでしょう』そう云ったのは誰だったか、ウキナである。
かの男の変貌はその翌日から誰の目にも明らかになった。本人が認めてないだけで、当事者のウキナが気にしていないだけで周囲はそれに振り回されることとなる。


「あ、」


扉間がその一言を口にして硬直した。離れていてもその小さな音を拾ったウキナは真顔のまま重石のように立ち止まる男を不審に思いつつ、軽く会釈をする。

道案内をしていたカガミは先生と慕う少女に気づくなりすぐに駆け寄りたかったが今は棟梁直々の命令に従うことを優先し、グッとこらえた。

しかしカガミが扉間の方に振り返ると、男は両腕を胸の前で組んだままの状態で目を見開いているものだからつい「大丈夫か」と手を伸ばす。目と鼻の先まで近づいたと思ったら、パチパチと派手な音が鳴り響く。昨日とよく似た光景に流石のウキナも吃驚した。


「え?」

「……」

しかし昨日の事を知らないカガミはなんだ?と疑問を感じた瞬間、取り囲まれる。勿論、うちはに。


「千手扉間、不用意にチャクラを練らないで頂きたい。敵襲と勘違いします故」

構えていた刀をカシャンと鞘に納めたセツナは視線でカガミに怪我がないか訊ねる。それに気づいたカガミがコクリと頷くと、未だ硬直状態の扉間の視線の先を辿り、吃驚した。


「あの、ウキナ様が何か?」

「……」


なんだろう、この漠然とした不安!

それでなくともウキナ様を盲愛している棟梁たちにこのことを知ったら、折角の同盟もおじゃんだ。心の狭さと嫉妬深さなら忍界一、それがうちはだとカガミは懸命にも自覚していた。

「(ど、どうしよう)」

幸いにもというか、愛想が良いようでその実他人との境界線がはっきりしているウキナが自らこちらに近寄ってくることはない。無駄なことはしない上に自身が兄弟たちからどれほど執着されているか自覚している彼女は争いの火種を蒔くことは無い。

だからこそカガミに出来ることは扉間を我に返して一刻も早くこの場から立ち去らせること、である。


「さあ行きましょう」

グイグイ背中を遠慮なく押す。中々足が動かないので少々手荒な行動をとっていたが、相手が千手のそれもナンバー2のお偉いさんなんてことは今のカガミの頭にはない。

嫉妬したマダラの方が断然怖いからだ。カガミの行動に下に俯いたままの扉間は始終何も口には出さなかった。





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