木下闇 | ナノ


▽ 相容れない


16話




 ウキナが去った後の部屋では扉間が先ほど触れ合った指先を何となくジッと見つめていた。
ジッと、ジィィィィィッッと、目から光線が出そうなくらい真剣に見つめていると話しかけられた。


「なに気持ち悪いことしてるの。馬鹿なの?やっぱりね!」

「黙れうちはイズナ」


嫌いなうちはの中でも一等嫌いな奴が来た、と鬱陶しそうに眉を寄せ、「早く失せろ」と謂わんばかりにしっしっと手を払う。
明らかに歓迎されていない反応に気を悪くするどころか全く堪えず、それどころかずんずん進み入ってどかりと腰を下ろすイズナ。
そのまま扉間に出された茶菓子を奪い取ってパクパク口に納めていくので扉間は怒りよりも呆れが勝った。放置しようと無視していたら向こうから話しかけれた。


「ねえ、」

「………」

「お前ウキナに気があるの?」

「!!…な、なにを」


 無視するつもりが無視出来ない発言に思わず反応する。
扉間は普段の冷静さを忘れたかのように耳まで真っ赤に染めていて、誰が見てもその答えは明らかだというのに彼は咄嗟に「違う!」と否定する。

そんな反応を「ふーん」と生返事をしつつ、未だ否定する扉間の反応を観察していたイズナはにっこり微笑んだ。


「自分に素直になりなよ。まぁ堅物真面目キャラに見えてムッツリスケベなお前が『おい』俺の可愛い可愛いウキナにうっかりがっちり惚れちゃった!ってのは仕方ないよ。だってウキナはそれだけ魅力的だもん。でもね」

「お前俺の話しを聞いていたのか。俺は惚れてない。あろうことかうちはの、それもマダラやお前の妹に惚れるなんて『惚れてるよ』……」

「お前は惚れてる。否定したいだろうけどこれは現実だ。さっきのやり取り見て俺も鳥肌立っちゃったくらいお前の反応は気持ち悪かったけどね」

「(コイツさっきから云わせておけば…)なら俺がお前の妹に惚れたと仮定しよう」

「仮定どころか事実だろ」

「……俺は千手、アイツはうちは。同盟を結んだからといって結婚できるはずがない」

「(なんでもう結婚まで想像してるの?コイツ無自覚の本気なの?)ふーん、じゃ、諦めるんだ」

「千手の辞書に諦めるの文字はない」

「……お前もう認めたの」

いや認めん!


うわ!千手メンドクサ!
イズナが内心でそう叫ぶと「ところで」と扉間が問いかける。

「何故俺にそんなことを聞いてくる」

「ん?」

「お前はマダラを優先する。そのマダラが妹を他の男に嫁に出すはずがない。お前の行動はマダラの意に反するものだ」

「そうだね。兄さんはウキナに他の男だろうが女だろうが、それこそ犬猫動物無生物関係なく近づくことを嫌がるよ」

「じゃあ何を企んでいる」

「酷いなぁ…企んでなんかいないよ。俺はただ兄さんの幸せ、ウキナの幸せは俺の幸せ。お前の不幸は俺の幸せ、ってだけだよ?」

「……一つ聞く」

「なーに?」


扉間がクルリと頭を回しその赤い瞳がイズナを映した。


「だが仮に俺がアイツに惚れていると認めた場合お前は協力するのか」

仮にと云っておきながらもその目は爛々と輝いていた。
扉間の疑問混じりの熱い視線を向けられたイズナはウキナに似ているとよく言われる顔でニッコリ笑って答えた。

「誰がお前に協力するもんか。くたばれ」


一般的にマダラの愛が重すぎて知られていないがイズナもまた重度のシスコンである。





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