▽ 偶然の産物
03話
人前で『緋の眼』を使わないこと。それがマダラがあの後言い聞かせてきたことだった。
「今のお前には身を守る力が少ない。その力は強大だが長期戦に持ち込まれれば厄介だ」
そう、私の弱点は長時間の戦闘が不可能なこと。もって10分から15分といったところか。
ただこの時、数年ぶりの念能力を使ったせいだろう、無意識に念を纏ったままだった。
常人よりも多く、尚且つゾルディックの血を引き旅団の仲間と磨き上げたオーラは悪質である。補足すればそっくりそのまま今の私は引き継いでいた。
したがってそんな状態の私を抱きしめた兄はというと、
「あ、」
「!?」
マダラの身体から湯気のようなものが物凄い勢いで噴き出した。
***
将来的役に立ちますよ、と彼の精孔を(偶然)開けてしまったことを詫びたあと慰めのように付け加える。
マダラの身体からオーラと呼ばれるエネルギーがまるで沸騰した薬缶の湯気のように勢いよく漏れ出した時、これってアドバイスした方がいいのでしょうか?と思いつつ、「頑張れ!頑張れ!」と応援していると兄は自力で纏まで習得した。
「…ッウキナ!」
「はい兄さん」
「……」
いくら自力で<纏>を成功させたマダラだが死にかけたのには違いない。未だ苦しげに胸を抑え息を乱すマダラを前に焦ることもなく、涼しげな笑みを浮かべたウキナ。
文句の一つでも云ってやろうと声を上げたはずなのに、
「なんでもない」
「そうですか?」
クソォ、可愛過ぎるだろう!!
妹バカが身悶える姿を新鮮な気持ちで観察する。
これがあのマダラ。
どうでもいいと思っていた。ほんの少し前までは。
遠い未来で死のうが、近未来で絶望と失意を味わい悪堕ちしようが…。
でも、惜しいと思う。紙媒体からでは分からない彼の姿をもっと知りたい、と。
取りあえず、
「いい加減に壁を殴るのはやめてください。お父さんに怒られますよ、兄さん」
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