木下闇 | ナノ


▽ 本丸うちは


ネタの刀剣うちは及び本丸うちは設定

「本丸うちは」別名ブラック本丸の審神者の更生所


***




2205年において、NARUTO界は創作として知られている。だが時の政府により、刀剣男子たちと同じように過去の歴史を守るため、世に顕現された。

ついでにいうとNARUTO界においてうちは一族の一部の人間(=人外)は何を間違ったのか神格化されており、普通の刀剣男子よりも上位の存在である。

故に刀剣男子が聞くはずの言霊は聞きにくい、というより彼等は非常に気位が高く身内意識が強い。一人が屈しないと耐えている間にもう一人が切りかかるなんてざらだ。要するに特別の力を持っているからと言って平和な世界でダラダラと暮らしてきた審神者に勝てるはずがないのだ。泡玉のような儚い夢から現実を知ったのは割と早かった。



ブラック本丸――…付喪神たる刀剣男子に理不尽な命令を下したり精神的肉体的疲労を蓄積させたり、男女問わず閉鎖的な空間に閉じ込められたストレスを発散するべく色々やらかしちゃった審神者が作り出したものである。

基本的に本丸の主の領域には他の人間は入れない。政府の人間だろうと例外はない。したがって演練で「あそこはブラックですよー」とか通報されてもどうしようもない。頭を抱えた当時平の政府職員A氏はお前がどうにかしろとか無茶ブリする上司に疲れ、いっそ死んで楽になろうと現世からランナウェイを図った。


「―――ここは、あの世か?」
「いいえ、ここはあの世とこの世の境目です」


人の気配がない空間。辺りを見渡していたA氏は背後から掛けられた聲に驚き、その人物の顔を見て息を呑んだ。黒壇のような黒髪を靡かせ雪よりも白い肌の美少女に見蕩れた。だが少女の身に着ける衣装は重度のオタクだったA氏には見覚えがあるものだった。


「君は…いや、貴方様は」

花が咲き綻ぶように微笑んだ少女は「楽しそうだから手を貸してあげましょう」と天下五剣の三日月に匹敵する美貌で蠱惑的に囁いたのだった。




 本丸うちはの審神者A2の朝は早い。何て言ったって、4時起きである。朝の4時に起きてすぐに取り掛かるのは廊下の掃除。しかも現代の便利アイテムではなく雑巾で埃一つ残さないように拭き取らなければいけない。

その後は朝食の準備である。比較的料理が出来るA2は同じく料理が出来る審神者C3と並んで下準備を済ませる。これからやってくる人物のために。


「邪魔だ、砂利ども」


A2とC3はその声を聞いて長谷部よりも早くどいた。一応言う、彼らは人間である。

現れたのはヤマアラシみたいな髪型の癖に威圧感とオーラが半端ない美形。固そうな髪も目も服も黒だから全身真っ黒くろすけだ。

彼は一応刀剣である。だが刀剣男子ではなく刀剣うちは……どっちも一緒だろって?いやいや彼と刀剣男子を一緒にしたらダメだ。刀剣男子=いい子、刀剣うちは=恐怖の大王、OK?が本丸うちはの常識である。


本丸うちは――…それはブラック本丸を作ってしまった審神者が落される場所。地獄の底よりも恐ろしい、更生施設なんて嘘だ!ここは悪の巣窟だ!とか言いたいけど言えない。ここには審神者の自由権なんてものはない。あるのは刀剣うちはの下僕となるか、屍になって裏庭の妖木(?)ゼツの肥料となるかの二択だ。


本丸うちはが出来たのは政府の重鎮A氏の発案であった。A氏がその日連れて来た人物こそ(暇つぶしに現世に遊びに来ていた)神様であり、彼女と彼女の背後で殺気立ち逆らうものを(物理的に)沈めて来た男達はシスコン拗らせた神様であった。

彼等の協力によってブラック本丸の審神者たちはまとめて本丸うちはで通常とは異なる任務を熟すまでどこにも帰れません!を実行中なのである。



さて、朝の4時半から台所にやってきたヤマアラシことうちはマダラは頭には三角頭巾、おかんに似合う割烹着を身に着け、A2とC3が用意した道具で料理を始めた。完成されていく料理は料亭のものかと思うほどの出来だが、これは審神者のメシではない。A2とC3、それから今ごろ風呂掃除をして朝風呂に入る刀剣うちはのための準備を整えているB4やD5は審神者である。れっきとしたブラック本丸の審神者。かつて刀剣男子たちに極悪非道な行いをした審神者に間違いないが、彼らはこの本丸うちはでの生活一日目で彼らに懺悔した審神者である。


真名をいえないからAやBで話しているが、マダラは呼ぶ気があればAのことも真名で呼ぶ。いや、基本的に「砂利」しかないがA2は此処にいる間は一生それでいいと思っていた。


何故なら彼は忘れもしない。この本丸うちはに来た時の最初の絶望的瞬間と恐怖政治の幕開けの光景を!!


***



A2はその名の通りよくいう村人AとかモブAとかと一緒であるが、二代目である。政府役人のA氏とは別のAでもある。

詳しくいうと、A2の前には当然Aがいた。正確には審神者Aと審神者A2。刀剣うちは勢の「面倒だからAからDでいいだろう」により6人目からはA2、B2、C2…と呼ばれている。

審神者A2が来たとき、Aはいなかった。Aは思った、もうここから出られたのかと。

ブラック本丸の審神者たちは皆一刻も早く自分の本丸に戻りたかった。そしてそこで見目麗しい刀剣男子たちを好き放題する…そこはご想像に任せるとして、更生所に送られてもブラックの審神者は相変わらずだった。……当初は。


「(俺も早くこんなとこ出て行ってやるぞ!)」

A2は固く決意した。どうせ更生所といっても今は人権というものがあるのだからそれほどひどいことはされないだろう、と高を括っていたのもある。

A2以外にも周囲は皆同じ事を考えていた。あたりは薄汚い人間の底知れぬ欲望渦巻く気が充満していた。ブラック本丸によくある澱みが室内を埋める。
が、背筋が凍り付くほどの禍々しい気配に一変。
入室していきた集団に平伏したくなる自分に困惑した。


先頭をブスリとした表情で顔に螺旋状の痕が残る男と疲弊した表情の銀髪隻眼の男が歩く。
次に精悍だが愛想がよさそうな男と洗練された雰囲気の、白皙の美形が現れる。彼らに守られるように、そして前回登場したマダラに抱きかかえられ、先ほどの白皙の美形によく似た美少女が誰よりも可憐に、だが誰よりも恐ろしいほどに美しく微笑んでいた。

その後ろを中性的な美少年たちが歩く。全員その手には刀が握られていた。


「全く歓迎しないがようこそ本丸うちはへ」と、一番先に入室した男が懐から分厚い紙を読み上げていく。

この本丸うちはでのルールを説明され、真っ先にキレたのはA2の隣に座っていたC2だった。聞くに堪えない罵言にすら顔色一つ変えない男達。

瞬間――、C2は胸を貫かれ死んだ。A2は何があったかよく理解できなかった。彼の耳が拾ったのは、C2の悲鳴でもなく甲高い鳥の鳴き声のような無数の音。目が映したのは、青白い雷光を腕に纏う銀髪男。

ドサリ、その重い音が室内に響く。倒れた男の口端から血が流れた。ピクリとも動かない男に、少なくとも彼が死んだことは理解できた。


銀髪の男は手から血を滴らせたまま一言。

「オビトが説明してるの、邪魔しちゃダメでしょ」

ね?と小首を傾げ笑う男が恐ろしかった。


恐怖で肩を震わせるA2は男の目が全く笑っていないことに気づいた。

男…はたけカカシ(何故うちはじゃないのに刀剣うちはなのか訊ねたものは既にこの世にはいない)を呼び止めたのは説明していた男(オビト)である。飽きれたような、仕方なさそうな声色と表情がこの場には不釣り合いだった。


「あ〜、今見た様に、逆らったり怒りを買うと死ぬから。おいサスケ、政府に連絡してC2が終わったから次の番号の奴持ってこいって伝えろ」

「俺に命令するなオビト。C3か、確か女だったような…っち、面倒だな」

「おいサスケ、行き成り殺すなよ?」

「そーだよ。あれを破ってない限りは一日一殺って決まりでしょー」

「ああ、解ってる」



俺たちを無視して交わされる尋常じゃない会話。平然と人を殺しておいて顔色一つ変えない。いや、変えてた。少なくともすっきりした!って感じにはなってる。

A2は瞬時に理解した。前任のAは戻ったんじゃない、殺されたんだと。
窓ガラスに映る自分の悲愴な表情は本丸にいたころに刀剣男子たちがしていたそれと同じだった。

そしてガラス越しに、唯一といってもいいこの場に似つかわしくない少女と目が合う。前の本丸では幼い姿形をしていた短刀たちを蹂躙した男でも美しいそれを欲しいとは思わない。


まるでそう、遥か高見から見下ろし嘲笑う神のごとく貌で俺たちを笑っていたのだ。暇つぶしの玩具、それが俺たち記号の名前を持つ審神者たちの別名。



***



 普通、刀剣男子に「演練にいくよー」と伝えれば喜んで自分が出ると挙手するものだ。その後選ばれたものは嬉しそうに、選ばれなかったものは悔し気だったり、次は俺にしてくれよと頼み、それを審神者たちはうちの子最高!と内心で身悶えしていたりする。平和だ。


本丸うちはにおいて常識は通じない。ブラック本丸の常識すら通じない。ここで通じるのはうちはの常識オンリーである。


「ああああああああののののののののマ、ママ、マママママママダラ、マダラ様!?」

身悶える?何それ美味しいの?
生まれたての小鹿の如く足を震わせ、心臓がバクバクいう状態。額から冷汗が滴り落ちたが拭う余裕すらなかった。


めんどくさそうに振り向いたマダラに瞬時に正座し、完璧なまでの土下座を披露する。現世では猫背で姿勢が悪くブラック本丸での怠惰な生活を送っていた審神者がそれを学んだのはこの本丸に来てからである。

彼は震える声で演練に参加してくれるように懇願した。
え?普通審神者が懇願しないと出ないの?と思った奴はうちはマダラの前に出ろ。すぐ意味が分かる。


この本丸うちはで最も危険な行動力のある破壊神、彼は世界は唯一無二の愛する妹を中心に回っていると本気で信じている末期のシスコンである。

その妹も妹で容姿だけなら美形揃いの刀剣男子にも匹敵するほど整っているというのに性格は神様とは正反対の、それこそ魔王様と呼んで平伏してもいいほど傍若無人だ。
タイプでいったら三日月系の儚げな容姿を裏切っての残酷非道な思考。鶴丸のギャップが可愛らしいほどえげつないことばかりやらかす。
それを止める筈の兄が揃って「ウキナが望むなら」と肯定するのだ、救えないだろう。勿論害を被る審神者たちが。


まあそんな魔王様とマダラ様は置いておいて、他の刀剣うちはも碌な奴らじゃない。妹一人に注がれるベクトルが異常で気づきにくいが、それぞれブラコンも患っていらっしゃる。短刀サイズの刀剣うちは(例:8歳サスケ)は泣き虫だ。すぐ泣く。

が、泣かせると五月蠅い。そして神速でやってくるモンペ。超怖い。

刀剣うちはって一部を除いて皆黒髪赤目(写輪眼)だから正直前の本丸に戻っても加州が怖い。や、加州自体が怖いんじゃなくてそれによって思い出すトラウマ…そう、顔合わせ初日の威嚇も込めた刀剣うちは全員の写輪眼&万華鏡写輪眼&輪廻眼の眼光を前に失神しなかっただけすごいだろう。

虐げると何百倍にもされて返ってくるので例え相手が誰であろうと審神者は下手にでなければいけないのだ。









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