トリップしてから数年後です
ある日突然、まさかの異世界トリップを経験する羽目になりました。
私、オビト、カカシの三人は落ちていく途中で見事にはぐれてしまい、気が付くと広い何もないビルの階層のような空間に佇んでいる私。
8歳くらいの子どもの姿で落っことされ困惑しているところを見つけてくれたやや年上の少女と黒スーツが似合う男性と出会いました。
拾ってもらった後、段々チャクラが失われていく一方で身体から発生しだした念の指導をしてくださったのがこの方、将来は残念なことにストレス性のハゲになるノブさんと一緒に修業しているのがパームちゃんです。
そして念を思えて数年、何の因果か厄年ともいえる14歳の身体に成長した私も、6年近くパームちゃんと暮らしながら日々帰るための情報収集をしてきたがそれにも限界はある。
だから思い切って今年のハンター試験を受けてみようと思った。
そのために同居人で友人の彼女にそのことを伝えたんだけど…
「も、もう一度いって頂戴」
「(うわぁ髪が逆立ってる…)だからハンター試験を受けようと思うの」
「はァアア?!!」やっぱりあっさり納得はしてくれない。
手元のグレープフルーツの果汁が顔に飛んできた。痛い。
彼女の性格はいい意味で一途で素直、悪い意味でちょっと思い込みが激しかったり執着したものに対する態度が顕著だったり…同性の私に対してこれだから師匠への愛情はもっと凄いんだけどね。
なんて暢気に現実逃避している間にパームちゃんのオーラが禍々しくさを増し、そのへんに置いてあったクッションはナイフの穴が埋め尽くすほど突き刺さり見るも無残な状態になっていた。ふむ。
「ねえ私たち友達デショ?と・も・だ・ち…そう、心の友とかいて“しんゆう”って呼ぶような仲よね私以外に友達なんてスズには要らないわそんな奴ら私の能力で地の果てまで追っかけて串刺しにしてあげる。だからこのまま一緒にここに暮らしましょうよ帰るとか謂わないわよね?え?待っている人がいる?ふ、ふふ・・・そんな奴ら要らないわァアア!!」
そういって口端を引きつらせ苛つき、その手に持つ拘束具を握りしめじわじわと距離を縮めてくるパームちゃん。ヒステリックを起こしだした・・・普段は照れ屋さんで可愛い所もあるんだけど、ちょっと気がたつと凝縮された怒りで瞳孔が開いて室内の空気が凍結しかけるほど冷たいオーラを発する。
「(目付きが…)と、友達だよ!でも私は…」
ガシャガシャと、鈍く重々しい拘束具を掻き鳴らし乱雑に髪を震わすまさに鬼の形相の友人に背中を汗が伝う。
どこかオビトに通ずる何かを感じさせます。
…どうしましょう。変なフラグを立てたみたいです。
***
「スズスズスズスズスズスズスズスズ……スズがいない。いるのはお邪魔案山子だけ……ああ世界はなんて残酷なんだろう!!」
「悪かったな俺で!!」
一方その頃、見事再会を果たした二人がビルの屋上にいた。
会って早々、カカシだと知るや否やこの態度。カカシの額に青筋が浮かんだ。
「ほんとなんでいつもバカカシはすぐ見つかるのに俺のスズはいないんだ!」
「……いい年して泣くなヨ、オビト」
俺、はたけカカシは数年ぶりに再会した悪友(親友だったけど格下げした)に思いっきし煙たがれてる。俺こそ泣きたい。
オビトより先にスズを探そうと、まずは情報収集だと辺りをうろついていたら血の匂いを感じて現場に向かった。
そして飛んできた針を躱しつつ、何故か使えなくなってきた忍術をギリギリまで使って逃亡し、気が付くと国境を越えていた。針の攻撃がやんだかと思えば目の前に現れたのがイルミ=ゾルディックという、今の俺の師匠(見た目は俺と同じくらい)で、そのときは俺の銀髪を見て身内かと勘違いしたらしい。っていうか身内ならなんで殺そうとしたのさ!!
何だかんだでこの世界のチャクラの代わりに手に入れた念能力の指導をしてもらいつつ、オビトやスズを探して数年。そしてイルミ経由で紹介された変人(ヒソカって名乗ってた)に連れて来られたのは見覚えのある男。
そう、オビトと再会したのだ。
だけどオビトの奴、俺の顔を見た瞬間嫌っそうに顔を顰めてスズの行方を聞いてきた。俺の方が聞きたいくらだ。
当然知らないと答えるとあからさまに舌打ちして「つかえねー」とほざきやがった。
しかもヒソカがオビトを鍛えていたらしいけど、オビトは仮にも師匠にあたる彼を「おい、変態」と呼んでいる。オビトが「狙うんならこのカカシにしろ。俺の全てはスズに奉げてるんだ」といった。クナイを投げつけた俺、悪くない。
ヒソカが俺とオビトを見比べるなり何故か瞳を輝かせて舌なめずりした。キモイ。こいつにもクナイを投げておいた。すると笑い声が大きくなった。
視線を逸らそうと隣でスズスズ唸っているオビトをみれば
「嗚呼、スズ。俺のスズ、愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してるなのになんでお前がここにいないんだ俺の愛が足りないのかそれともまた誰かに邪魔されているせいなのかなんにしても君がいないなら世界はまた地獄でしかないんだなら創らなければいけない勝者だけの世界平和だけの世界愛だけの世界リンがいる世界を!!!」
…そうだ、こいつも(主にスズに関して)相当危ない奴だった。
なんか世界を創ろうとしてるけど屹度碌でもない世界だろう。今は念能力があるからとんでもない制約と誓約で実行するだろうことが予想できる。
オビトという人間に慣れきっているカカシとアブノーマルなヒソカとイルミ以外の人間なら全力で回り右して忘れようとするくらい不気味だ。
「ね☆謂った通りダロウ?僕もイルミも相当だけど彼も中々アレさ」
「うん。何だか親近感湧くよ」
「それにしても君が云ってたようにそっちの彼も…フフ
」
助けてスズ!俺の胃が破裂しそう。
「ところでカカシ。今度俺たちハンター試験を受けるんだけどお前も受けてみれば?」
「そうダネ◆オビトも探し人を見つけるにはそろそろ限界だし、ライセンスが有った方がもっと効率的ダヨ☆」
……確かにハンターならではの情報網がある。スズを探すには必要だろう……この二人に加えてスズ欠乏症で何をしでかすか解らないオビトも一緒に受験するのには物凄く気苦労が絶えないだろうけど仕方がない。スズのためだ。それに万が一俺たちみたいにイルミやヒソカレベルの変人の下にいるなら一刻も早く助けないとな。
そこまで考えてオビトに伝えようと思えば、さっきまでスズスズ唸っていた馬鹿はいつの間にか立ち直ってイルミたちに受験申込の仕方を聞いていた。
……昔は俺の方がチームワークを乱して単独行動をしてたけどさぁ、成人してから対場が逆転するなんて思うはずもないよネ。
***
補足
三人ともチャクラの代わりに念が使えるようになった。
発は得意とした忍術をアレンジしている。
何故かオビトとカカシは写輪眼の『神威』のみ使用可。
相変わらず二人とも神威空間は繋がっている。
トリップ先
スズはノブに拾われる。
カカシはイルミ、オビトはヒソカに世話になる。
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