02
オビト視点
「中忍選抜試験?」
「うん。そろそろなんだって」
懐かしいよね、って笑うスズが可愛くて、つい見惚れてしまう。うん、この新婚生活みたいな状態が幸せすぎて辛い。いつまでも永遠と続けばいいのに…って思うのと、成長して益々綺麗になるスズが見たいって気持ちがせめぎ合ってる中、俺は平静を装って懐古した。あの時はカッコ悪い所しかみせられなかったなぁ。
「受けるのか?」
勿論そうなったら付いて行こう。
頭の中でその算段を付けていると、スズが首を傾げた。
「う〜ん……ちょっとまだ解んない。アスマが推薦してくれるかどうかもだけど、そもそもうちの班員にやる気のない子がいるしね」
「(やる気なし・・・ああ、あのシカクさんの)」
「まぁ、それ以前にうちの班は四人だから、一人別の班に入れてもらうことになるしね」
そう、現在四人班のアスマ班は、他のメンバーがすでに中忍になり人数が欠けた先輩班に入らなければいけないのだ。そして十中八九、それはスズになるだろう。何だかんだで親から受け継いだ猪鹿蝶がばらけることは想像できない。
「……」
「ん、アスマ次第だね」
オビトは考えた。あのバカカシのことだ。すっかりチームワークが乱れた第七班のために、今回の試験に生徒を推薦するだろうと。そうなった場合、他の新人担当の上忍も今回の試験を見送る筈がない。
中忍選抜試験はその年の状況にもよるが、基本的に数日間は家に帰れない。今年は木の葉で開催されるため、移動に時間を費やさなくても大丈夫だが、それでも暫くはスズと離れ離れになるということだ。付いて行くにしても、流石に上忍どころか、火影まで出てくる試合。スズが危ない時に助けに飛び出して捕まるのはダメだ。特にカカシ、スズが俺たちのこと話すまで他の奴らとはちょっと違うけど幻術をかけたとはいえ、あの術も完璧じゃない。解けたらぶん殴って忘れさせるけど、スズの前では出来ない。
でも俺がスズに会えない日々を送るなんて我慢できるはずもない。ならば、
「ということだ、付き合え、イタチ」
「なにがということなのか、さっぱりわからないが・・・いい加減俺をこき使うな、オビト」
スズが他の班に入るなら、好都合だ。その班員に、俺がなればいい。もう一人はイタチを誘った。俺の事情を知っているのって、コイツかアスマくらいだし。勿論イタチ以外の面子は候補に入らない。
13歳時に変化して、周囲には殉職したうちはオビトだと認識しないように都合のいい幻術をかけておく。ほんと俺、うちは一族でよかった。
「万華鏡写輪眼を私利私欲に使うなどナンセンス」
「煩い。」
だけど俺にはイタチが参加せざるを得ない情報がある。
「あの大蛇丸がお前の弟を狙って今回の試験に参加するってのにか?」
「…っ!?」
ふ、食いついた。ブラコンには許し難い話だろう。
イタチにボロ敗けした大蛇丸が写輪眼を狙って、自分好みの美少年の肉体に入り込む噂は本当だ。もしアイツの狙いがスズなら即刻抹殺にかかるが、スズを狙っていないなら別にどうでもいい。
だがイタチには重要なことだったため、予想以上に食いついた。
「分かった。俺も参加しよう。だがそのためにはそのことを火影様に知らせる必要がある。それに…」
「手引きするのは根のダンゾウだろうぜ。未だにパイプが切れてないらしいしな」
「だからこのことは慎重に事を運ばなければ…スズちゃんにも話すなよ」
「解った。」
「?珍しく素直だな。危険だからと忠告しそうなのに」
不思議そうに首を傾げるイタチ。確かに知らせておいた方がスズの安全のためにもいいのだろうが、
「危ない所を助けて『オビトかっこいい!大好き!』って言って欲しい」
「屑が」
ペッと唾を吐き捨てるイタチの白い目なんて俺には効かない。
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