01
オビトがうちに住むようになってまず始めたことは、彼の生活用品を新調することだった。うん、やっぱり何事も新しいものって、気持ちがいいよね。
オビトの私物は神威空間に一通り収納されているらしく、引っ越し作業は楽だった。だって荷物の整理しなくてもいいし。それほど広くない家で場所を取らないっていいよね。でも食器とか、お客さん用がオビト用に変わるだけで、これといって買い替えるものがない。結局オビトと二人で買い物に行っても、買ったのは新しい服くらいだった。
私が言うのも何だけど、オビトは男性としてとても体格が良い方だ。昔の彼からは正直予想外ってくらい、かっこよくなった。風呂上りの薄着姿をチラリと見ちゃったんだけど、それこそ綺麗なものだと思う。すらりと伸びた背に、男の人らしい体格。 思わず目を逸らしたけど。
オビトはよく私の手を握ってくる。
そんなとき、実はオビトの手が好きだなあと思う。骨張ったごつごつとした指先が求めるのは何なのかと、そんな野暮なことまで気にしてしまうほどだ。
無言で見下ろしてくるオビトを、身長差故に上目遣いで見るのだが、その度に口に手を当ててる。
その手の間から血が見えた気がして、慌てる私に、
「チョコレート食べ過ぎた」
って答えるのが、可笑しくて、つい笑ってしまった。
意地悪して、「ならバレンタインはチョコお預けだね」って云うと、この世の終わりみたいな顔をしてる。冗談なのに。
話は逸れてしまったけど、その新しい服は良くオビトに似合いました。
まぁうちは一族が贔屓にしている呉服屋さんで買った服だから、似合うんだけど。
お店の人も私も満足げに頷いたのを見て、オビトは少し照れたように口を尖らせた。ちょっとかわいい。
「スズ、似合うか?」
「うん!かっこいいよ!」
余談だけど、男の子に「可愛い」は禁句だから「かっこいい」に変換して感想を述べる。
でもパァァ!と顔を光らせるオビトがバカワイイ。
そういえば、オビトって意外とお坊ちゃんだった。嬉々として購入する服についた値札は、見なかったことにしよう。
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