おぼえていますか | ナノ
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 なにから話そうか、そうだね…まず、もうオビトも解ってるだろけど私には<のはらスズ>だった記憶があるの。うん、そうだよ。オビトとカカシと一緒にミナト班だった。神無毘橋でオビトを失って、その後また敵に捕まって三尾を入れられて、操られて、助けようとしてくれたカカシを酷い形で裏切った……そんな私。

 ん?そんなことないって?私が悪くないって?うん、でもこれは私の自分勝手な感情。自己嫌悪してるだけだよ。


 たしか…アカデミーに入る前だったかなぁ。今の私は結構大きな怪我で生死の境目を彷徨ってたんだって。そのときにね、<のはらスズ>だった自分を思い出したの。だけど思い出したのはそれだけじゃなかった。

 そこでスズは一旦言葉を切り、オビトを見つめた。目の前の彼が夢の中で泣いている姿を思い出して、胸の辺りをギュッと掴んだ。


「私にとってこの世界は物語だったの」





『この世界が物語』・・・・・・スズに云われた言葉の呟きオビトは困惑した。だが彼にスズを信じないという選択肢は無いに等しい。それにずっと考えていたスズの笑顔の裏に隠された苦しみを知ることができるんじゃないかと期待し、彼女に説明を促した。その間スズから一切目を離さず。


「私が<のはらスズ>になる前の世界…つまり前世だね、そこではこの世界は物語として描かれていた。一人の忍者が火影を目指して成長する世界・・・その主人公は誰だか解る?」

「うずまき、ナルト・・・」

「正解。ナルトが下忍になるところから物語は始まるの。そして担当上忍のカカシの過去も物語では徐々に明かされていく。そのチームメイトの一人が、<のはらリン>だった。」

「『リン』?」


不思議そうに繰り返すオビトに苦笑する。でもオビトは彼女のことを知ってないといけない。


「うん。私がのはらスズだった時は物語のことなんて覚えていなかった。自分に前世の記憶があるって知ったのは今のかがちスズになってから。だからあの時は唯ののはらスズとして生きていた。私の生涯は物語のリンと同じだった。でもリンと違って私はまたこの世界にいる。」


 リンの居場所を奪ったことに罪悪感を感じながら生きていた。カカシとオビトが原作のようになるんじゃないかって思って、原作が最期どうなったかは知らないけど、それでも対立した二人があまりにも悲しくて、勝手に自分のせいだって思って。二人にとっては迷惑な話だろう。本来居るはずのリンの居場所を取ったよそ者でしかない私がそんなことを想うのは。でも確かにあの時の私はのはらスズとして二人と生きていたんだから。


「カカシのもう一人のチームメイト、うちはオビトがリンの死を切っ掛けに世界に絶望するの。『月の眼計画』を実行するにあたって、邪魔な存在は消して、オビトは素顔を隠しその日が来るまでうちはマダラとして暗躍しつづける。でも……そのオビトはそれだけリンが大切だった。うちはマダラと対峙して、オビトがカカシたちに協力して、全部終えたオビトの前に現れたリンはね、オビトとの約束を守っていたの。私はオビトと約束したのに守り切れなかった約束を、彼女は護ってた。」


…――だから私には貴方に好きって云ってもらう資格はないの。




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