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極度の緊張で過呼吸まで起こしかけたところで、イタチさんが流石に憐れんだのかナルトたちにあわないか?と提案してきた。
「え?」
「ほら、前にナルト君を見ていると勇気がでるって言ってただろう?」
「うん、」
サスケは苛々する、うざい、ウスラトンカチだ、などと酷評しているが、彼らにとってナルトは眩しい光だった。スズやイタチの感想はナルトを見ていると諦めることを忘れ、もっと頑張ってみようと勇気づけられる。とくにスズにとっては嘗てのオビトを連想させる明るさが懐かしかった。勿論この提案はイタチが愛する弟の初里外任務姿をぜひ見たい!という欲望も込められている。あわよくばサスケのカッコイイ姿を見て愚行(オビトに告白する)をやめるかもしれないという期待も混じっていた。
「じゃ、じゃあちょっとだけ」
そう云って赤らんだ顔で笑うスズに、サスケを好きになってはくれないかなぁと真剣に思うイタチだった。
*
す、すこしだけ!ちょっとナルトから勇気を貰ったらすぐにオビトのところにいくのよ!って自分に言い聞かせる。でも実は今頃修行しているだろう第七班の姿が見たかったんだよね。
「(う、わぁ!)」
本物だ!今更だけど、ただの木登りだけどこの修行シーンが見れて感動してしまった。第七班だ!カカシも松葉杖ついてる!うわあ、うわあ!!
ふふ、ナルトもサスケも泥だらけ。サクラはやっぱり一番上まで登れたんだ…凄いなぁ。いまは私を姉のように慕ってくれる同期の友達だけど、いつか…医療忍者としてもあの子に負けちゃうだろうなぁ。ちょっと悔しいけど、サクラには頑張れるだけの心の強さがあるもの。今だってサスケを見ている彼女は、カカシを見ていた私よりももっと、もっと大きな愛情をサスケに抱いている。サクラはいつだって真っ直ぐで、私はここにきてまでやっぱり揺らいじゃう。
「(弱いなぁ)」
臆病な自分が嫌い。
でもね、
「ウオォォォォォ!!諦めねぇってばよォォォ!!」
「(ナルト……)」
その背中に頑張り続けるオビトの姿が重なった。やっぱり好きなんだなあ。
もう認めよう、ううん、認めた!オビトが頑張ってるとこ、これからも見たいの・・・すぐ傍で、ずっと、ずっと……。
「(ありがとう、ナルト。)」
心の中でお礼をいう。
よし!・・・ヒナタに背中を押され、イタチさんに手を引かれ、ここまで来たんだよ。いつまでも下向いてちゃダメ!オビトがくれたもの、今度こそ返したいから……もしオビトが要らないっていったら……ううん、謂われても何度だって伝えなくちゃ!自己満足でもなんでもいい、兎に角伝えたい!伝えなくちゃ変わらない!
やっと決心がついた。ほんと私って遅いなぁ。
「オビト、好きだよ」
溢れんばかりの想いを思わず口にする。しかしそのとき後ろの方から何かが倒れる音が聞こえた。
ドサッ!
振り返ると、真っ赤な顔をしたオビトが尻餅付いていた。え・・・ええ!!
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