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波の国に到着したはいいけど…
「あ、あの…イ、イタチさん?」
「すまないスズちゃん…これを作った奴は後で俺が締めておくから」
白皙の美貌に青筋を立て、手の中にある粘土をぐしゃりと握りしめてそう云われてもイタチさん怖い!
初めは良かった。空中を移動するなんて初めてだから、つい興奮して年甲斐もなく「凄い凄い!」と騒いだほどだ(イタチさんに微笑ましそうに見られ、後で感じた羞恥心が半端じゃなかった)。この分ならすぐにオビトに追いつくわ!って思っていたら何故か乗っていた鳥が壊れた。
へっ?と現状を把握した頃には私はイタチさんの腕の中にいた。う、しかも横抱き。
まるで王子様みたい…思わず下からその綺麗な顔を見つめてしまう。イタチさんが「大丈夫か?」って心配して声をかけてくれるまで見惚れていた。紅潮した頬を覚ますべく顔を振っていると、壊れた鳥粘土からひらひらとなにか紙のようなものが舞い落ちた。それを拾ったイタチさんの手元を覗き込めば、
<やーい!ざまーみろイタチ!うん>
明らかに犯人が解るそれに、粘土ごとイタチさんが握りつぶしたのが冒頭である。
*
そんなわけで途中から徒歩で行くことになり、予定より遅れて到着した。このイタチさんは分身だったのでチャクラも限られているから口寄せは出来なかった。ああ、もうすぐオビトに会えるんだなあ………//////
「スズちゃん?」
「あわわわ/////」
突然足を止めたスズにイタチは首を傾げるが、スズはそれどころじゃない。
「(オビトを支えたい、オビトの傍で見守りたい。約束を、今度こそ守りたい――・・・そう思ったからここまで追いかけてきたのはいいけど…、)うっ、どうしよう」
今更ながらに緊張してきた。
「あぁ〜〜っもう!もう!」
その恋する乙女の可愛らしさに、デイダラへの怒りが一時的に静まるイタチ。妹のように可愛がっているスズをあんな奴(オビト)に渡すのが、今更ながらに惜しむ。
「(矢張りサスケの嫁に・・・・)」
ほぼ無表情のイタチがそんなことを考えているとは知らず、スズはそのまま一時間以上悶々と悩んでいた。
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