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(カカシに嫌がらせでもして気を晴らそうと思っていたが・・・・いい意味で予想以上だ!喜劇だ!この上ない喜劇!!)
「プ、プププ、プ、ププッ(も、もうダメ、)」
腹が痛ぇ!と笑いを堪えるのに必死なオビトは小刻みに震えていた。三日月のようにニンマリした双眸の先には再不斬に水遁で閉じ込められたカカシの姿。
時は少し遡る。
まずカカシは薙ぎ払われた再不斬の大刀をしゃがんで避けるが、二撃目の蹴りで飛ばされて湖に落ちた。
そして水の中から上がろうとするも水牢の術に捕まってしまう。
「(しまった!水中に一時逃げ込んだつもりが大失策だ!)」
「お前に動かれるとやりにくいんでな。・・・さてと、カカシ。お前とのケリは後回しだ。まずはあいつらを片付けさせてもらうぜ」
大きな水球に封じ込められたカカシの姿が視界に入っただけでオビトはバンバンと地面を叩いて大爆笑していた。
他人の不幸は蜜の味というなら、オビトにとってカカシの不幸こそ極上の蜜になるだろう。
その時、
「───だああああー!!」
叫びながら再不漸に突っ込むナルトにオビトは目を見開いた。確かにさっきまでぶるぶる震えて役に立たなかったガキが、一人立ち向かったのだから吃驚した。
すぐに蹴り飛ばされるも、手には額当てが握られているのを目敏く見止める。
そのまま顔をゆっくり上げるナルトから目が離せない…。
「おい、そこのマユ無し・・・お前のビンゴブックに新しく載せとけ。いずれ木ノ葉隠れの火影になる男───」
キュッと、額当てを縛りなおして続きを云った。
「───木ノ葉流忍者・うずまきナルトってなァ!!」
(………火影、か)
自分はもうとっくの昔に諦めたものだ。スズとの約束もスズがいなくなってから意味をなさなかったのだから。
でもスズは生きている。もし彼女があの約束を覚えていてくれたら、きっと、俺は、今度こそ……―――
「なんてな……きっと、覚えていないさ。あんな昔のこと………、」
眩しい太陽なようなナルトから目を逸らし、オビトは一度その場を去った。
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