おぼえていますか | ナノ
07



早朝、活動時間が疎らな忍びの姿はそんな時間にもちらほら見える。早起きのお年寄りが朝の散歩を楽しんだり、少しずつ夏の蒸し暑さが感じられる季節に移ろってもこの時間帯はそれほど変化はない。

火影岩を下から見上げる形で最後の四つ目を見つめるスズの眼差しには、もう迷いはなかった。
そんな彼女に声を掛けたのは里でも有数の手練れ、うちはイタチ。

「おはようスズちゃん」
「おはようイタチさん」

今日は宜しくお願いします、と頭を下げる。
本来木の葉から波の国まで忍の足でも半日はかかる距離だが、イタチには数時間で可能とする手段があった。

「俺は無断で里外に出られないから、一応分身をつける。問題ないと思うが『大丈夫です!』・・・そうか、なら乗物の説明をしよう」

昨日の今日で、目を見なくても気合の籠った聲に耳を傾ければ彼女の意志の強さがうかがえる。今にも消えそうな蝋燭や不安定な針の上に置かれたのと違う、まっすぐ、自分の覚悟を決めた人間だ。

イタチは小さく口許に笑みを残し、懐から白い塊を取り出した。


「っえ?あの、それは……」

戸惑うスズにはある意味見知ったものだった。

「これは起爆粘土で作られた鳥だ」


まさかのデイダラ(の芸術)?!!


え、この人がなんでそんなもの持っているの?という疑問は次の科白で解消された。

「やたら俺に絡んでくる髷からもらったんだ(分捕ったんだ)」

いま副音(本音)が聞こえたけど・・・。

スズの何とも言えない眼差しを無視してイタチは分身体をだし、巨大化した鳥の上にスズを連れて乗り上がった。


「じゃあ気をつけて。もしあの男がサスケに何かしそうだったら止めてくれ。恐らくアイツを止められる人間は君しかいない」

「……っ、」

原作の、戦場で暴れるオビトを思い出す。あれを見た時ちょっと思ったことがある。

『もしもリンがいたらどうなったんだろう』って。屹度オビトはあんなことしないだろうなって、思ってた。


だけど今この世界にいるのは私で、もしオビトが世界を壊したいとマダラの手を取ったとしても止められる気がしない。私の存在も否定されるかもしれない。

でも、オビトを信じてみたい気持ちがあるのも確かだ。

「はい!解ってます!」

取りあえず、オビトの誤解を解いて、それでありがとうと、ごめんねと、・・・・を伝えよう。


グッと握りこぶしをつくるスズの笑みを、眩しいとイタチは目を細めた。




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