おぼえていますか | ナノ
06




朝に演習で顔を合わせたばかりの親友とまた遭遇した。目が合うなり、大人しい気質の彼女からは想像もできない強引さを発揮され、無理矢理彼女の家に連れていかれる。

ヒナタの部屋は私よりも女の子らしく可愛い。机の上にはヒナタの恋を応援しようと、無理矢理ナルトを捕まえて幼い二人を撮った写真が飾られている。

思わず目を細め、あの時の真っ赤になったヒナタの慌てっぷりを思い出す。

私の視線を辿り、何を見ているか気づいたヒナタが脳裏の思い出のその姿と変わらず、口に自ずと笑みを浮かべる。

「ヒナタ可愛い」

「もう!か、揶揄わないでよ!」

「ふふっ、だって、ほんとに可愛いんだもん」


いいな、こんな風に可愛くなりたいなぁ……って何考えてるの私!今精神年齢幾つ?この間アスマに「そろそろ俺らも三十路か〜」とか溜息吐かれたけど(取りあえず殴っておいた)実際それプラスだからなぁ。イタチさんに対して恋愛感情持っただけでも、精神的ショタコンになり兼ねない。ましてや同期なんか、問題外だ。


歳は考えたくないという女の性に思考を飛ばしていると、ヒナタに振られた話題に驚いた。ヒョワッ!とか言ってしまい、恥ずかしい。

「スズちゃん、悩んでるでしょ?」

日向の洞察力なめてました。ポーカーフェイスを気取っても、すぐにばれる。全てを見透かす瞳にきょどっていると少し低い聲で名前を呼ばれた。こんなのいつものヒナタじゃない!!でも怖いから白状することにした。

「……あの、これは、その、わ、私じゃなくてね、アスマ…そう、アスマの知り合いの女の人の悩みなんだけど!」

しっかり前置きしておく。でもヒナタの生暖かい目に、その続きが云えず口籠っていると「続けて」と促されてしまった。

「…その人は今の私たちくらいの時にある男の子が好きだったの。でも同じ班のもう一人の男の子の好意に気づかなくて、無責任なことばかりいって・・・・・・10年以上経って最近再会したら、その男の子は大人になってもまだ女の人を大切にしてくれて、それに彼女も気づいて・・・・・・彼女は今では初恋の人が特別好きってわけじゃないの、でもなんでかずっと好きでいてくれた人が気になって仕方がないの。いや、その人が放っておいたら何仕出かすか解らないってのもあるんだけどね?だから責任感的な感情で気になるのか、それとも」

自分でも何言ってるんだってくらい支離滅裂な内容だ。途中でもごもごしてしまう、やはりこの気持ちの名前は言いにくい。

だけどヒナタはいつものヒナタはどこ行った?!くらい今日は直球だった。

「じゃあその女の人は初恋の人じゃない、もう一人の男の人が好きなんだね」

「ひぇッ!う、ち、ちが・・・」「違わないでしょ?」「う、ぅん、そう、そうだね。それっぽいね」


ヒナタは聖母のように慈愛に満ちた笑顔を浮かべる。そして目の前で紅潮しすぎて頭から湯気が出そうな親友が可愛くて仕方がなかった。

(大好きなスズちゃんが、ナルト君とは違うお日様みたいに笑った顔が好き。だから、)

そのためなら何でもする。とヒナタは何度もスズの気持ちを口に出させて自覚させる。この意外と不器用な親友にはこれくらいしないと素直に認めないだろうと、気合を入れてグイグイ迫りきった。ちょっとでも誤魔化そうとすれば白眼で見破られる。ここにきてヒナタの眼の性能は著しく右肩上がりに跳ね上がったのも、強い意志があってこそだろう。

スズが羞恥心で死にそうになる一歩手前まで続けられ、等々スズが「オビトのことが好き!」と叫ぶまでに至った。もうスズは最初の見え見えの前提を忘れている。ヒナタが人払いをしていなかったら、日向の人間にオビトの存在がばれていただろう。普段のヒナタにはない気迫で念押しされた使用人は大変困惑していたが・・・親友が関わるとヒナタはちょっと擦れてきたらしい。

叫んだっきり穴があったら入りたいと顔を手で覆うスズの、手で隠しきれていない肌や耳が真っ赤に染まっている。スズ大好きなヒナタには抱きしめたくなるほどの光景だが、内心「私のスズを盗ったのは『オビト』っていう男の人なのね」と心のノートにその名前を書き入れるのも、忘れなかった。




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