おぼえていますか | ナノ
01



「……」
「……」


ヤバい。
何も言われていないが、空気でわかる。この状況は非常にまずい。

恐る恐る視線を向ければ、そこには今まで見たこともないような顔をしたオビトがいた。眼差しも見開きすぎており、その眼には放心状態と書かれている。口も今はだらしなく半開きになっていて、マヌケ面と笑えるほど滑稽だが空気で今笑ったら後がないと悟ってしまった。


「スズ…、」

たっぷり数十秒おいてからオビトは掠れたような声を出した。それはやや震えており、不安定なチャクラがボウッと燃え上がる音を奏でながら、その足元に火花を散らした。次の瞬間には、ドカン、とこの辺りは固い地面のはずが陥没したような穴をいくつも作り出す。いきなりできた穴に足をとられそうになって、反射的にうしろへ飛んだが、自分の所にはそれ以上何もなく、右方向に飛んだシノの方が足の踏み場もないくらいボコボコになっている。

なに?と思った瞬間、ふっと私の両脇を風がふいた。ひるがえる外套が目の端に見え、頬をかすめた。

瞬きした次の瞬間、消えたオビトのチャクラを辿るとスズの視線の先、そこには文字通り、血の涙を流すオビトがいた。そしてフルフルと戦慄きながら、シノの首元を掴んで宙吊りにする姿に驚愕する。

「シノッ?!!オビト!なにして『……って』 オビト?」


様子が可笑しオビトは仮面を外している分、瞼を下ろしている左目以外の全身で“嫉妬”と“怒り”を露わにしていた。兎にも角にも、このままじゃいかないと糸を使って強制的に引き離す。茫然と突っ立っているオビトを放って、ゲホゲホと呼吸をするシノに駆け寄ってのも仕方がなかった。


しかしスズの行動にショックを受けたオビトはその光景に頭が真っ白になる。
スズもスズで、どうしてオビトがここまで取り乱しているのか、その理由を解ってはいるが認められない自分の方が今は勝ってしまった。


「いや、な、まさか…本当に……本気…なの、か…?」
「……」

(御免、オビト。解っているけどなんのこと?)

「おい…なんとかいえ…この、うぅ…おい…」
「あの…」


段々弱まっている口調と鼻を啜る音に戸惑ってしまう。どう反応していいかわからなくて、曖昧にあはは…と笑いながら目線を彷徨わせ、どうしてそれを言おうと思ったのか、後で考えても理解できないが動揺のあまり爆弾発言を投下してしまった。

「えっと、取りあえず、シノにあんなことするオビトは嫌い」


言った瞬間。オビトの両眼がカッ!と見開かれた…





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