おぼえていますか | ナノ
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0  傍にいられるだけで充分だとか、言い訳探しばかりしている
(※ヤンデレオビト注意報)




一般的に『好きな子ほど虐めたい』という幼児期の少年によくみられがちな傾向もなく、逆に少女特有の『好きな子を目で追ってしまう』が適用された俺のアカデミー時代は今思い返すとスズ一色だった。スズと班員になって小躍りしたのをカカシに見られたり、ミナト班で撮った写真に写るスズに口づけようとしたのをカカシに見られたり・・・あれ?アイツに目撃された思い出が多くね?

兎にも角にも俺の青春時代=スズの公式が成り立つほど、俺はスズが全てだ。
何故か生き返ったスズがいるこの世界が絶望から希望へと激変して以来、毎日のようにアカデミーで授業を受けるスズを守る為に(自主的に)警護していた。

時にアカデミー教員に見つかって職務質問をされたり、念のために身内を呼べと謂われたからイタチを呼び出したり(始終渋い顔をしていたがこいつは俺に並々ならぬ恩があるから逆らえない)、二十代からの人生もまたスズ一色で決まっていた。


だからだろうか、稀に昔のことを思い出してしまうのは・・・

あの頃はこうだった、と表上の命日より以前、カカシの上忍祝いの企画相談と告白を勘違いしたことがある。馬鹿みたいに花束まで用意して木の下で待っていた苦い思い出を思いだし、つい今度こそ!と20後半になって意気込むのは仕方がなかった。


仮面越しの再会を果たし、次こそ直接向き合おうと決意して、すっかり当初と目的の異なった組織と化した暁のアジトを後にした。



木の葉の里にある、山中一族の人間が経営する花屋で花束を購入する。その際、店の店員が「彼女さんにですか?」といったのに顔が緩んでしまった。

「まだだ」と返したそれに「頑張って下さい」と応援され、今日の空の色のように俺の心は晴れ晴れとしている。次に買いに来た時は「そうだ」と返せるように・・・いや、スズと二人でくるのもいいかもしれない。

(往来のど真ん中で花を抱えて不気味な笑い声を洩らす男に、「ママ、あのおじちゃん」「見ちゃいけません」などというやり取りがあった)






今日は合同演習をしているらしい。情報提供者はイタチだ。里外の情報とスズの情報を交換している。流石に里内部の下忍の任務予定なんて調べにくいからな。ギブアンドテイクだ。

アイツの大好きな弟が今波の国で大変そうだからな。速く行ってサスケの無事を確認して来いと「かぁーかぁー」口煩いイタチの鴉たちに分かったと伝えたが絶対解っていない。明日も来そうだ。まあ予定としては今からスズと感動の再会と積年の想いを伝えてからカカシを揶揄するついでに様子を見てきてやるつもりだ。


フッ・・・奴に託していたものを、いや、託したが守り切れなかったものを今度こそ自分で守ると宣言するのも悪くない。



砂利の上を歩く足音に混じり、近くに感じる気配と笑い声――複数の気配がそれぞれ分かれていく。
どうやら解散らしい。想い人はアカデミー時代もよく一緒にいたグラサンをかけた男と連れ歩いていた。「スズ」と名前を呼び掛けて、視界に映ったその光景に足が止まった。


――かつて大っ嫌いだったカカシを思って嬉しそう笑うスズの姿と重なった。



その光景に堪らなく恐怖した。

脳裏でシノとカカシを同一視してしまい、カカシに胸を貫かれて死んだスズの最期の姿が何度も壊れた映画のように流れていく。それと同時に今のスズに会ってから感じていた幸福を覆い尽くすほどの闇に、失った後の地獄にまた落とされるような予感に身を震わせる。

現実には一瞬の間、オビトにとっては月読でもかけられたように長時間の出来事。



ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!



なぁ、どうして俺じゃダメなんだ。お前はそんなにも俺のモノになりたくないのか?この狂いそうな胸の奥で疼く感情のまま…嗚呼どこかにお前を閉じ込めてしまいたい。そして二人だけの世界を創りたい。それが駄目ならいっそお前の全てを壊したい……

嗚呼そうだ、全て壊して、奪って。今だってお前の隣に俺以外の他の人間がいるのも触れるのも許せないんだよ。何もかも奪って、自分の腕に抱き締めてしまい。蒼白になって涙を流すスズの姿は屹度途方もなく哀れで美しいだろう、そしてその全てを手に入れた時の気分は言葉では尽くし難いさ。そしてそのまま永遠の夜の闇に連れ去ってしまえば・・・閉じ込めた先の、今のスズの目の前で棺桶に入ったあの頃のスズの身体に遺っている血を啜り、肉を食み、骨を噛み砕いて、全部全部全部全部、全部俺の血肉に変えてみようか?屹度泣き叫ぶだろうスズを優しく抱きしめて、頬ずりをして、愛を囁き続ける蜜月を送ってみようか…

その甘美な夢想を現実にしようか、それとも……

買ったばかりの爛々と咲き誇る花が儚くも美しく散りながら地面に落ちる様子はスズと重なった。





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