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紅と二人っきりです。死の森の出入り口付近です。
「・・・・・・・・・」
無言の沈黙がこれほど精神的に辛いとは思いもしなかったよ!!
紅にどう誤解を解く?というよりそもそも誤解されるようなことした?
悶々と考えていると重々しそうに彼女は口を開いた。
「ねぇ、貴方・・・何?」
「・・・・っ?!!」
行き成り確信をつくような質問に戸惑っていると、紅はゆっくりと息を吐き出し、彼女の親友の『のはらスズ』を語りだした。
・・・どうやら私の読み違いだったみたい。紅が私とアスマの関係を疑って嫉妬していたわけじゃない、『私』の存在自体を疑っていたのだ。
幾ら里内を出歩くときは警戒して変装をしていてもばれる時はバレル。現に何故かアスマには一発でバレたのだから、女同士の紅なんか気づいて当然か。
アスマと違ってあの子は現実主義者だから前世云々生まれ変わり説なんて信じるわけがない。だから彼女からしたら私は異分子だ。この警戒も頷ける。
でも私は…何、か。
ほんとね。何だろう、私って・・・
「私は・・・スズよ、紅」
***
紅視点
呼び出したはいいけどこれってなんだか苛めてるみたいじゃない!
何か言わないといけないと思い、口を出たのは
「ねぇ、貴方・・・何?」
嗚呼もう!何言ってるの私!
案の定、言葉を詰まらせる彼女は悪くない。ヒナタたちの話の通りの性格なら噂にあるようなことするわけないじゃない。
でもあの言い知れぬ雰囲気は二人の間に何かあるみたいで・・・それで、つい・・・。
嗚呼やだ。これじゃ嫉妬に狂う女そのものだわ。
今すぐこの子に謝って、アスマを問い詰めることの方がいいわ。きっともし噂通りだとしてもそれは浮気したアスマが悪いんだし・・・そもそもアスマがロリコンってことになるわけだし。
いたいけな少女に上司の権限を使って好き放題するアスマ……これって立派なセクハラよね。やっぱりアスマが悪いのね、問い詰めて、本当だったらあの子の分まで殴って、それで二人で話し合う、うん、これがいいわ!!
一人で悶々と考えすぎたのか、戸惑う彼女に誤魔化す様、親友でこの子に似ている『スズ』の話をした。
信じていないけど生まれ変わりっていうのが本当にあるなら屹度この子はスズの生まれ変わりなんだろうと漠然と思った。
だって髪型や服装が違っても友達と笑い合う姿は誤魔化しようがないじゃない。
明るい笑顔、控えめで引っ込み思案なヒナタや表に出にくいタイプのシノを引っ張り出せるのはスズの魅力によく似てる。
だからこの子が、「私は・・・スズよ、紅」と、この一言にどんな気持ちを籠めていたかなんて気づかなかった。
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