おぼえていますか | ナノ
08




演習が始まって驚かされたのはヒナタの成長だった。


「はぁっ!」

「っく・・・」


紙一重で躱したけど、日向一族の柔拳は掠るだけでも致命傷になりかねないから恐ろしい。アカデミー時代はよく組んでいたからヒナタの動きは熟知していると思ってたけど、この短期間で大分改善されている。紅の専門は幻術だと思っていたけど体術の指導も出来るらしい。彼女も私が死んでから10数年、里が誇るくノ一なんだからこれくらい当然か。

ヒナタが右腕を付き出したあと、次の動作に移動する前に左脇がやや後退すると次にくるのは左側からの衝き、という先入観が仇となった。
左の攻撃を避けるために横にずれた位置に右足の蹴りが来たので地面に手をついて背中を仰け反って躱す。無理な体勢から持ち直せたのは後ろで控えていたシカマルが影真似でサポートしてくれたおかげだ。

チーム戦で行うバトルだけどうちの班は一人多いからじゃんけんで負けたイノが先生たちの隣で「頑張れーシカマル働けーチョウジも動きなさい!!」と応援してくれている。
キバの赤丸とのコンビネーションは流石で、部分的に肥大化させたチョウジの右手が叩き落とそうと頑張ってるけど速さで負けている分、中々上手くいかない。

シノの虫攻撃はシカマルには止められないし、「俺がヒナタに体術で勝てるわけでーだろ」と試合前の相談段階で早々とお手上げ宣言してくれたおかげでヒナタとシノ、二人同時に任されてしまった。正論でもちょっとムカついたので容赦なくサポート役としてこき使わせてもらっている。


さて、二人の動きを止めようにも私の幻術じゃ紅という幻術のスペシャリストの部下である二人に通用するはずもなく、残されたのは体術と忍術。しかし冒頭のようにヒナタが体術で押してきたので後方から秘伝忍術を使うシノが厄介だ。


「へ!俺たち第八班の勝ちだぜ!!」


勝ち誇ったようにキバが嗤い赤丸も同意するように吠える。
だけど

「…そりゃまたスゲー自信だなキバ」

「あ?この状況が見えねぇのかよシカマル。流石のスズもシノとヒナタの相手をして俺と赤丸まで抑え込むことはできねーぜ?」


だから俺たちの勝ちだと謂うキバにシカマルは口端を上げて「へぇ〜」と語尾に疑問詞が付きそうな口調で意味ありげに告げる。


「そりゃお前の読み間違いだぜ?」

「何を言って……なッ?!!!」

「え?」

「ムッ?」


「うん、捕獲完了っと。シカマル、チョウジ、有難う」

「ううん。スズこそお疲れ様」

「おう、ナイスタイミングだぜ」

「キャー!!さっすがスズ!!男達より頼りになる〜」



同時に動きを止めたキバたち。勿論私の曲弦糸で拘束したからである。
「俺がヒナタに体術で勝てるわけでーだろ」とシカマルは謂ったがその続きがあった。「だけど俺とチョウジがサポートに回ってもスズ一人でアイツら三人を同時に相手できるわけがない。だからスズの糸に一番勘付きやすく動き回るキバたちはチョウジが相手してその間に俺がスズを影真似で動かす、お前は糸を張ることに集中しろ。」と。

だけど始終シカマルに任せていると相手側にも不審に思われるし糸を張り巡らすこともできない。だからこそ態と隙を見せて回避はギリギリでシカマルがサポートする、という印象を植え付ける必要があった。ヒナタの動きは改善されているがだからといってあんな擦れ擦れの回避法しか取れないわけじゃない。あれだと本当にシカマルの手助けがないと第二挙でゲームオーバーだ。

ギリギリの試合を維持しつつ、捕獲作戦が実行に移せる状況になったらシカマルがそれとなく合図を送る。それでチョウジが三人から離れて後は私が実行する。
作戦を立てたのはうちの参謀さま。正直前世でシカマルがいてくれたらと懐かしんだこと数知れず。

でもオビトもカカシも屹度シカマルの作戦を無視して動きそうだなぁ…。確かカカシってナルトのこと「意外性ナンバーワン」って称したんだっけ?
私から謂わせればオビトは勿論、カカシだって十分周りを振り回していたよ?何度ミナト先生と溜息を吐いたことか。


シカマル、チョウジ、イノとハイタッチをし(ここでそんな歳じゃないだろうという意見は聞かない)不機嫌そうなキバと残念そうなヒナタたちと共にアスマたちの所に足を向けた。





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